ステートメント ENDURING CARE

ENDURING CARE
Day With(out) Art 2021
Visual AIDS




ケアを続けること、ケアを耐え抜くこととはどういうことでしょうか。数十年におよぶこの危機のなか、私たちはケアをどう持続させられるのでしょうか。

1996年に命を救う抗ウィルス剤の登場によりHIV周辺のケアは根本的に変わりました。しかし、未だにHIVを完全に治癒することはできずワクチンも存在しません。現在ではHIVは検出限界値未満まで減らし感染もしないところまで抑えられますが、HIVと生きるということは、自らの意志で毎日決められた通りに服薬を続け定期的に診察を受けることや、官僚的仕組みを前にした自己権利擁護(self-advocacy)、さらにスティグマや誤った情報との格闘と切り離すことはできません。「ENDURING CARE」は、こういった重なり合う現実を声にし、ケアワーカーやHIVと生きる人々の忍耐をみつめ、同時に、時に医療やヘルスケアがいかに辛く苦しく、アクセスが難しいものであるかを示唆しています。

この短編集では、次のような声に耳をかたむけ、活動を見つめます。何十年にもわたるHIV治療薬の服用によって引き起こされる副作用や医療問題について、長期サヴァイヴァーたち/ヘルスケア制度の崩壊によりHIVと生きる人々に不可欠な薬が届かない状況に立ち向かうメキシコのクィアとトランスのアクティヴィストたち/大胆な戦略をもちい、複数のAIDS関連団体がケアの提供を活動趣旨にしながらもスティグマと害を助長していると訴えるフィラデルフィアの黒人とブラウンのHIVケア従事者たち。

ネグレクト、悪用、乱用、製薬会社による利益誘導... こういった問題と向き合う中で、「ENDURING CARE」は、コミュニティをオーガナイズすることや相互扶助、医療やケアを通した連帯を作り直します。例えば、直面しているスティグマや恐怖についてよく考えるために音とビデオをもちいヴィジョンを共有する台湾のHIV+の女性たち/HIVと生きるプエルトリコの若い人たちが場所作りを通し繋がる姿/今あらためて解かれ現れる収監されていた女性たちの文章や詩のアーカイヴ/1980年代のイギリスで行政による初めての注射針交換プログラム実施のために警察と報道メディアを味方につけた公衆衛生役員を振り返る。彼らはどのようにそれを成し遂げたのか。/これらの作品を通してアーティストが、プライバシーや可視性に関わる問題と向き合いながら、いかに協同と弱さを隠さない状態を中心に据えたクリエイティヴな過程をへて、ケアを浮かび上がらせているかがわかります。

「ENDURING CARE」の参加アーティストらは、2020年の春 -- アメリカにおいてはコロナウィルスのパンデミックの初期であり、白人至上主義の存在を国中が無視できない状況だった頃 -- に最初の企画書を提出しました。審査委員はアクティヴィストでアーティストであるアイヴィー・アルシー、ジーン・カルロムスト、トーマス・アレン・ハリス、マシュー・ロドリゲス。この(HIVの)パンデミックを“終わらせる”という会話においては、毎日を生き抜くことの継続やこのウィルスと生きる日々を充実させることよりPrEPや予防の方が語られがちですが、あらためてHIV+の人々の経験を中心におくことを意識した7つの企画書が選ばれています。

しかしCOVIDが一過性でなく2020年中続く長い現実であることを集団として我々が理解し始めるなか、知恵や知識の情報源として、そしてこのパンデミックを生き抜き耐え抜くために、人々が長期サヴァイヴァーとAIDSアクティヴィストたちを頼りにし始めている姿に気づきました。同時に、米国では構造的人種差別やファシズムや搾取的な労働システムに対抗する草の根の組織化への大きな注目も伺えました。 黒人、ブラウン、先住民、クィア、トランス、障害をもつ人々のコミュニティにとって長く礎石となってきた相互扶助の構造がどのようなものかを多くの人は初めて経験していたのです。

「ENDURING CARE」のビデオはCOVIDだけにフォーカスはしていませんが、それぞれのテーマは両方のパンデミックに共鳴します。私たちが個としての力と集合的な力について想像力を働かせることを限定しようとするシステムへの応答として、「ENDURING CARE」は私たちお互いの深い繋がりや恩を強調しているのです。​

このプログラムを観た後には、ぜひ自分の政治的意識がこの1年半でどうシフトしたかを考えてみてください。あなたは自身のコミュニティとの連動性をどのくらい意識するようになりましたか?それはあなたのケアへの理解にどんな意味を持っていますか?あなたのコミュニティにとって本当に意味のあるケアの仕組みとはどのようなものですか?




 

 

以上の文章は、 テッド・カー、ブレイク・パスカル、カイル・クロフトがWhat Would an HIV Doula Do?コレクティブとThe New School大学のテッド・カーの授業「Life During Memorialization: History and the Ongoing Epidemic of HIV/AIDS in the USA」の学生の意見を聞きながら執筆したものをノーマルスクリーンで翻訳したものです。原文(英語、PDF)はこちら

本企画についてはこちら:http://normalscreen.org/events/dwa21


翻訳:Sho Akita
翻訳/編集協力:Jun Fukushima(Political Feelings Collective

ノーマルの気になる催し物リスト 2022年1月

2022
Normal’s List

11/13(土)〜2022/2/23(水) 久保田成子展「Viva Video!」 ◎東京都現代美術館 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/shigeko_kubota/

1/3(月)〜 ブックフェア 映画『ユンヒへ』 (loneliness books×本屋B&B) 本屋B&B https://bookandbeer.com/

1/1〜1/7 田中絹代特集 ◎早稲田松竹 http://wasedashochiku.co.jp/archives/schedule/15542

1/7(金)〜 映画『ユンヒへ』 ◎シネマート新宿ほか全国公開 https://transformer.co.jp/m/dearyunhee/

1/7(金)〜1/9(日) 今泉浩一監督作品特集上映会「ポルノとはなにか?」 ◎BUoY http://www.shiroari.com/habakari/Tokyo_BerlinDrifters202201.html

1/14(金)〜 映画『ハウス・オブ・グッチ』 https://house-of-gucci.jp

1/14(金)〜 映画『MONSOON/モンスーン』 ◎ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国 https://monsoon-movie.com/

1/17(月) 「トランス男性とは何者か――Ft系の葛藤、表象を語る」(周司あきら、吉野靫|梅田Latetal) ◎オンライン https://lateral-osaka.com/schedule/2022-01-17-3134/

1/20(木) ミニシアター『K2』開館 ◎下北沢tefu lounge  https://motion-gallery.net/projects/k2-cinema

1/21(金)〜 映画『声もなく』 ◎シネマート新宿・心斎橋ほか https://koemonaku.com/

1/21(金)〜2/3(木) 「CROSSCUT ASIA おいしい!オンライン映画祭」(国際交流基金アジアセンター、東京国際映画祭) ◎オンライン https://crosscutonline.jfac.jp/

1/21(金)〜1/30(日) カフェ・コーヒー・コリア Beyond the Border展 ◎dotcom space tokyo https://globalasianstudies.wordpress.com/social-gallery-kyeum/

1/22(土) 映画『片袖の魚』+東海林毅ショートフィルム選」音量大dB+ 大音量上映 ◎池袋シネマロサ http://www.cinemarosa.net/nextschedule.htm

1/23(日) トーク「成子から読み解く、女性アーティストの過去と現在」(新潟県立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館) ◎オンライン https://www.mot-art-museum.jp/events/2021/12/20211201165729/

1/28(金)〜2/17(木) 林月光/石原豪人展「Homme Fatales」 ◎画鋲ヴァニラ画廊 https://www.vanilla-gallery.com/archives/2022/20220128a.html

1/28(金)〜 『ロミオとジュリエット』(ナショナル・シアター・ライブ2022) ◎TOHOシネマズ日本橋ほか https://www.ntlive.jp/

1/30(日) グラウンドレベルシネマvol.2.5 ◎シアター・イメージフォーラム https://twitter.com/groundlevel2020

 
 

その頃、インターネットでは...

・映画『朝の夢』(池添俊|HENRI) https://www.cinematheque.fr/henri/film/151781-see-you-in-my-dreams-shun-ikezoe-2020/

・映画『王国(あるいはその家について)』(草野なつか|HENRI) https://www.cinematheque.fr/henri/film/151778-domains-natsuka-kusano-2018/

・映像集『Enduring Care』(Visual AIDS アートの(ない)日2021) http://normalscreen.org/events/dwa21

・映画『17 Blocks/家族の風景』(APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA) https://www.bunkamura.co.jp/cinema/apartment/films/article?id=2021101

・映画『アナザー ヘイライド』 https://normalscreen.org/blog/qv21web

・エッセイ Introduction to Audre Lorde オードリ・ロードについて (Political Feelings Collective)https://motion-gallery.net/projects/pfc1117/updates/39300

・新メディア・コミュニティ「me and you」 クラウドファンディング https://motion-gallery.net/projects/meandyou

・映画『キース・ヘリング〜ストリート・アート・ボーイ〜』 (MadeGood) https://filmarks.com/movies/96806

・映画『君がそばにいたら』(SONY PICTURES)https://www.sonypictures.jp/he/2527130

・レビュー 『マトリックス レザレクションズ』が描く虹色のスペクトラム(近藤銀河|Tokyo Art Beat) https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/matrix-resurrections_2021

・『贋作・終わりよければすべてよし』記録映像(gaku-GAY-kai 2021) https://youtu.be/WmuELcEFto0

・映像集『Enduring Care』(Visual AIDS アートの(ない)日2021) http://normalscreen.org/events/dwa21

[クィア東南アジアの今 その声のいくつか]まとめ

Logo Design: Satoko Miyakoshi | Image from Thunska’s Screaming Goats

 

2021年の後半にノーマルスクリーンで行われた特集[クィア東南アジアの今 その声のいくつか]の配信、イベント、記事をここにまとめて掲載!

EVENTS

 
 

ARTICLES


2016年6月、バンコク、ホーチミン、ハノイの3都市を訪問したときの記録。


主催:ノーマルスクリーン
助成:国際交流基金アジアセンター アジア・市民交流助成
写真:各アーティスト
特集ロゴデザイン:宮越里子
協力:京都大学東南アジア地域研究研究所|Deaf LGBTQ Center|坂川直也|小田なら|イメージフォーラム・フェスティバル|Queer Forever!

本特集のために、皆さんご協力&応援いただきました。
どうもありがとうございました!

エッセイ:フウン姉さんの最後の旅路(グエン・クオック・タイン寄稿)

特集:クィア東南アジアの今 その声のいくつか
Unmasked Queer Voices from Southeast Asia Today

2021年12月26日まで配信中の映画『フウン姉さんの最後の旅路』について、ノーマルスクリーンのために本作を選んでくれたアーティスト&キュレーターのグエン・クオック・タインさんが映画についてエッセイを書いてくれました!映画の鑑賞前か後にぜひ読んでみてください。

映画は12月26日まで以下の2つのページから鑑賞できます (割引あり):
Peatix▶︎https://madamp.peatix.com/
Vimeo▶︎https://vimeo.com/ondemand/madamp
いずれも内容は同じです。

Text by Nguyễn Quốc Thành

観客への新年の祝いを伝える前に、フウン姉さんは「身近にある幸福」という曲を歌う。照明とカメラレンズの角度でステージも真っ赤に見え、彼女の体に密着する水着形のドレスも赤く、肌の見えるビーズの紐はキラキラ輝く。そのボレロは離婚と子供の幸せとの間で引き裂かれる女心を示す曲なのに、観客はその不幸な女の本音が聞き取れないようだ。カメラは観客の男性や女性や子供の顔を捉える。その顔は困窮や生活の疲れを伺わせると同時に明るい笑顔もみえる。

あけましておめでとう!かつて南部と中部のテト(旧正月)にお祭りの盛り上がりを与えたビンゴ大会のコンサートがはじまる。中部沿海部に伝わるバイチョイというカード引きの祭に似ているが、カードの代わりに数字を使い、「何番だろう、何番かな?」などとくじを買わせるよう客を歌でひき寄せ、当たりを歌で読みあげる。賞品が当たればうれしいが、それだけではない。このお祭りには西洋の遊園地のように回転ブランコや射的もある。夜の賑やかな西洋の音楽の中、遠くから来た芸能の人はお洒落な(凝った)メイクと挑発的できらめく衣装で歌い、踊る。大勢の人の間を、ファッションショーでキャットウォークをするかのようにクジを売る。

ビンゴのあるお祭りといえば、風変わりな美しい女性歌手のことを連想するようになったのはいつ頃からなのか。そのことについては映画は触れない。 ベトナム南部で、西洋からもたらされた遊戯と伝統文化を併せ持つテトがいつから楽しまれるようになったかも、述べられない。

コンサートが終わった地方のある静かな夜。喧嘩中のいたずらっ子たちを叱っているフウン姉さんの声だけが響く。ビンゴ売りのメンバーの映像は、光量不足のためにぼやける。体格のいい少年、背の高くすらりとした少女、ベテランの名歌手の人たちは一同座り、予測不能な未来の旅で起こることをハラハラと待ち構える。 

フウン姉さんとハン姉さんの会話から、彼女らはビンゴの人気が絶頂期をむかえた1980年代に旅芸人の生活を始めたことがわかる。この映画が捉えるのは、ビンゴ人気が下り坂になった後の、田舎にいる人が昔のように賑やかにテトを楽しむことがなくなった2010年代始めの様子だ。最初のシーンで掃除係、設営、屋台や小屋などがカメラの前に現れ、カメラの後ろの監督の声も登場する。

彼女は幼いころを回想する。親と一緒に建設現場に通い、小屋に住み、祭りの一団と会っていた。気分屋で、お洒落な服を着て何も恐れず非常に変わった人たちを遠くから興味と怖れを抱きながら見ていた。監督は過去の思い出を語るだけではなく、スクリーン上の出来事にも言及(または再現)しているのかもしれない。このドキュメンタリーに含まれる彼女の話と彼女が映すドキュメンタリーの話は分かちがたく、ともにあばら屋での生活、変わった人々、中部・南部や赤土の中部高原の農村への旅路を表現する。

彼女の幼い頃の話は、突然そこで止まり、なぜそれ以上話されないのか。もしかしたら、それらの記憶も、まさに監督のカメラレンズや語りで記録される現実だからかもしれない。ナレーションは過去と現在を混ぜ合わせ、思い出を現実に溶け込ませ、切り分けられない。

その最初のシーンから、直接的な方法(ダイレクトシネマの手法)をとるこのドキュメンタリー は、現実と演技あるいはドキュメンタリーとフィクションとの境界のぼやけ(あいまいさ)を見せるだけでなく、さらには映画と人生も切り離せないものであることを示している。

映画は、フウン姉さんのビンゴ団の活動とトランスジェンダー女性の団員のパフォーマンス/“演じる姿”を隠すことなく捉えている。 登場人物たちは客の前やステージの上で踊りを披露するだけではなく、現実の生活でも、カメラがあるときもない時も、演じ続ける。

さらに、本映画ではフィクションのような劇的なことがまるで用意されたかのように起こり、話が展開する。人の運命というのは決まっているから、逆らうことはできない。 かつて輝いていたビンゴ団はひどい目に遭い、フウン姉さんは落ち込んでしまう。監督は、カメラで映しきれなかった最後の旅をナレーションで語り、映画は終わる。    

劇場の明かりがついた時、映画は実に悲しいものだったにもかかわらず、私たちはいつものように拍手を監督に送った。ベトナム・ヨーロッパドキュメンタリー映画祭での上映は満席となり、若者から引退したお年寄りやドキュメンタリー製作者やハノイでのLGBT擁護団体の委員まで出席した。

監督と招待されていた一座のメンバー、ゴック・フンとの交流のために多くの人が上映後も残った。主人公がトランスジェンダーの映画が主流どころか社会現象になると誰が想像しただろう。その上映から数ヶ月後、ブループロダクションによりハノイとサイゴンでも上映され、大きな歓声を引き起こした。

これまでのベトナムでは、ドキュメンタリーのためにチケットを買う人はほとんどいなかった。ましてや、これは国内のインデペンデントの監督によるもので個人的な興味から生まれた作品であり、商業目的でも社会運動のためのものでもなかった。

簡単には観られなかった小さなドキュメンタリー映画を観客たちが映画際の輪から引っ張り出したとも言える。もしかしたら、本作の鑑賞者は監督と登場人物たちが浴びたあの強い舞台照明と暗い夜の道路灯の光を彼らと同じように浴びたかったのかもしれない。

 

『フウン姉さんの最後の旅路』の詳細と配信情報についてはこちら:https://normalscreen.org/events/madamphung

タインさんは、ハノイの団体Nhà Sàn Collective(来年の「ドクメンタ15」に参加)やQueer Forever!(クィアアートフェスティバルを2013年より開催し、検閲の厳しいベトナムで国内外の作品を紹介しトークイベントなども催している)に関わり展示やイベントを積極的におこなっています。 ノーマルスクリーンでは、2017年にタインさんを迎えて東京で上映も行いました:http://normalscreen.org/events/queerforever 

(タインさんの名前は、過去にはグエン・コック・タインと表記していました) 


本記事公開日:2021年12月8日
翻訳:チャン ティ トゥイト ミンさん
編集協力:小田ならさん


ノーマルの気になる催し物リスト2021年12月

Normal’s List
December 2021

今月は世界エイズデーにあわせてイベントもたくさん→https://aidsweeks.tokyo/events

Visual AIDSの映像も日本語字幕付きで準備出来次第、公開します!
Visual AIDSの日本向け配信や関連情報はこちらに登録してもらうと最新情報をEメールでお知らせします!
https://forms.gle/MmwPGQiP1rCkVvSH9

11/13(土)〜2022/2/23(水) 久保田成子展「Viva Video!」 ◎東京都現代美術館 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/shigeko_kubota/

11/19(金)〜12/24(金) 大垣美穂子展「UZU」 ◎KEN NAKAHASHI https://kennakahashi.net/ja/exhibitions/uzu

11/20〜12/18 TOKYO AIDS WEEKS 2021 https://aidsweeks.tokyo/events

11/27(土)〜 映画『水俣曼荼羅』(原一男新作) ◎渋谷 シアター・イメージフォーラム他全国順次 http://docudocu.jp/minamata/

11/30(火)〜 映画『17 Blocks/家族の風景』(APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA) ◎オンライン https://www.bunkamura.co.jp/cinema/apartment/films/article?id=2021101

12/2(木)~12/4(土) イッセー尾形一人芝居「妄ソー劇場・すぺしゃるVol.3「老いも若きも蚊帳の外」 ◎有楽町朝日ホール https://issey-ogata-yesis.com/index.html

12/3(金)~12/5(日) らせんの映像祭(逗子アートフィルム)逗子文化プラザ https://www.zushi-art.com/art

12/3(金)~12/5(日) UGOフリマ -無限年の瀬編- ◎新大久保UGO https://www.instagram.com/shinokubo_UGO/

12/4(土)〜12/26(日) SIN5 EXHIBITIN「100 characters」 ◎Community Center akta https://akta.jp/

12/7(金) 映画『ウィークエンズ』配信上映&トーク ◎オンライン https://qpptokyo.com/items/5f7ff5d26e8b2b589ae92a66

12/8(土)〜16(木) 『Gorillaz: Song Machine Live From Kong』 ◎新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、名古屋ミッドランドスクエア シネマ、なんばパークスシネマなど https://www.culture-ville.jp/gorillaz

12/11(土)〜 映画『街は誰のもの?』 ◎シアター・イメージフォーラム https://www.machidare.com/

12/11(土)〜12/17(金) 東京ドキュメンタリー映画祭2021 ◎新宿K's Cinema https://tdff-neoneo.com  

12/11(土)〜12/24(金) メイズルス監督特集 ◎下高井戸シネマ https://gucchis-free-school.com/event/salesman/

12/12(日) #PrEP オンライン学習会2021ライブ配信(PrEP@TOKYO) ◎オンライン(YouTube) https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe3YkmdnhhajNqI6zJ2C4Bp6NWJhMUz-DyhnbIzL0a45zGLUw/viewform

12/12(日) 1994年 あの夏、横浜で–ぷれいす東京誕生秘話(池上千寿子、生島嗣|ぷれいす東京) ◎オンライン(YouTube) https://aidsweeks.tokyo/event/2021/1212-placetalk1

12/4(土) 井谷聡子×長田杏奈 「自分の身体との関係をスポーツから考える」 ◎オンライン (エトセトラ・トーク第4回) https://peatix.com/event/3081668

12/14(火) マンガにおける男の尿描写についての研究 尿一郎 × 金田淳子 ◎高円寺パンディット http://pundit.jp/events/5615/

12/15(水) 本「トランス男性による トランスジェンダー男性学」(周司あきら著|大月書店) http://www.otsukishoten.co.jp/book/b594148.html

12/15(水)〜 映画『Hand of God -神の手が触れた日-』(パオロ・ソレンティーノ最新作) ◎オンライン(Netflix) https://www.netflix.com/jp/title/81156325

12/17 本「愛について アイデンティティと欲望の政治学」(竹村和子著|岩波現代文庫) https://www.iwanami.co.jp/book/b595689.html

12/17(金)〜 映画『偶然と想像』 ◎Bunkamuraル・シネマ他全国 https://guzen-sozo.incline.life/

12/17(金)〜 映画『マトリックス レザレクションズ』 https://wwws.warnerbros.co.jp/matrix-movie/

12/18(土) Visual Documentary Project 2021トークイベント ◎オンライン https://forms.gle/7b6ey8hUCLCdzprp6

12/19(日)〜 ドラマ『スノードロップ』(ジス×チョン・ヘイン共演) ◎オンライン(Disney+/スター) https://youtu.be/IbPqTGVU7EY

12/21(火)~12/23(木) 〈MAZEUM〉Black Art Show ◎ゲーテ・インスティトゥート東京 https://www.goethe.de/ins/jp/ja/sta/tok/ver.cfm?event_id=22556379&

12/23(木) 本『女パンクの逆襲──フェミニスト音楽史』(ヴィヴィエン・ゴールドマン著|野中モモ訳|ele-king books(Pヴァイン) https://honno.info/kkan/card.html?isbn=9784910511030

12/24(金) ドラマ『静かなる海』 ◎オンライン(Netflix) https://youtu.be/YGW-EZZ0tjc

12/29(水) & 12/30(木) gaku-GAY-kai 2021「贋作・終わりよければすべてよし」 ◎新宿 シアター・ミラクル http://www.flyingstage.com/top.html

アナザー ヘイライド』Daniel Peralta and Louise Hay, photo courtesy Daniel Peralta

 

その頃、インターネットでは...

・映画『フウン姉さんの最後の旅路』(12/26まで) https://normalscreen.org/events/madamphung

・Queer Visions 2021 オンライン版(映画『アナザー ヘイライド』) https://normalscreen.org/blog/qv21web

・スコールが通り過ぎるのを待つように。 東南アジアの性的少数者映画をめぐる近況(坂川直也) http://normalscreen.org/blog/seafilmstoday

・下北沢のミニシアター『K2』クラウドファンディング https://motion-gallery.net/projects/k2-cinema

・ブラック-クィア-フェミニスト関連書の翻訳出版 クラウドファンディング https://motion-gallery.net/projects/pfc1117

・新メディア・コミュニティ「me and you」 クラウドファンディング https://motion-gallery.net/projects/meandyou

・『Enduring Care』(Visual AIDS アートの(ない)日2021) http://normalscreen.org/events/dwa21

・エッセイ:フウン姉さんの最後の旅路(グエン・クオック・タイン寄稿) http://normalscreen.org/blog/madamp-essay

Queer Visions 2021 オンライン版

京都で約2年ぶりに開催のQueer Visionsで上映される作品から、3作品をオンラインでも特別に公開!HIVの蔓延に関する現状や記憶をシンプルながらクリエイティヴな方法で伝えようとする2本と台湾から1本です。
これまでもAIDS危機に関する短編映像を発表しているマット・ウルフさんによる新作『アナザー ヘイライド』は日本初公開。ルシア・エガニャ・ロハスさんの作品は、日本では昨年末にノーマルスクリーンで配信しました
台湾出身のアーティスト謝光宣(シエ・クワンシェン)さんの作品もこちらで公開。本作は京都の会場では、台湾のキュレーターとアーティストからなるThe Other Cinema Collectiveがフランスの映画際のためにプログラムした「母の満ち潮 娘の引き潮」という作品群(計8作品)の1つとして日本初上映されます。京都では、参加作家3人とこのプログラムを行った吳梓安(ウー・ツィアン)さんがオンラインで上映後のトークに参加してくれます。
他に京都の会場では、アーティストの小田香さんを迎え、作品とクィアとの関係について話してもらいます。小田さんの作品は映画際などで上映されることが今後もあるはずなので、その機会をぜひお見逃しなく!

 
 

* 日本初公開 *

アナザー ヘイライド

(マット・ウルフ|アメリカ|2021|18分|Another Hayride)
*右下【CC】をクリックすると日本語字幕を表示できます。

1980年代初期、エイズが蔓延していくなか、セルフヘルプ(自助/互助/自立)グループを率いるルイーズ・L・ヘイが、[ヘイライド]という集いの場を立ち上げた。死のパンデミックと向き合い、差別にも苦しんでいた何百ものゲイ男性たちを惹きつけ、ルイーズは「自分を愛すること(self-love)でAIDSを乗り越えることができる」と約束した。彼女のやり方は危害をおよぼすと懸念する声もあった一方、実際に癒されたと信じた参加者がいた。




Female Disappearance Syndrome

(監督:ルシア・エガニャ・ロハス|チリ/スペイン|2020|7分35秒)
*右下【CC】をクリックすると日本語字幕を表示できます。

HIVやAIDSのジェンダー化され偏った表象を、チリの作家リナ・メルアーネは「女性消失症候群」と名付けた。本作の監督のロハスは、HIVと生きる女性の抹消について調査し、疑問を投げかける。

The Islands ​島嶼舊式

(監督:謝光宣 ​|​ 台湾|2016|9分53秒​)

3つの島で撮影したありふれたオブジェと35mmフィルムの写真で構成された実験的なドキュメンタリー:イニッシュモア(アイルランド)、スタテン島(アメリカ)、対馬(日本)の3つの島で撮影された。写真とオブジェを再撮影し、手描きアニメーションを施して作品を構築することで、島は地理的な用語ではなく、心の状態となり、映画はノスタルジーを表現し、監督が土地、国家、アイデンティティーとの関係性を見直すためのプロセスやメディアとなる。



イベント詳細:http://normalscreen.org/events/qv2021
開催日:11月27日(土)
会場:Lumen Gallery

主催:Queer Vision Laboratory|Normal Screen
協力:CIP Books | The Other Cinema Collective | Visual AIDS

スコールが通り過ぎるのを待つように。 東南アジアの性的少数者映画をめぐる近況

特集[クィア東南アジアの今 その声のいくつか]のために、東南アジア圏の映画を研究/調査されている坂川直也さんに、東南アジアにおける近年のクィア映画の状況について寄稿いただきました!リンクをひらき予告映像などを見ながら、ぜひ読んでください。

スコールが通り過ぎるのを待つように。

東南アジアの性的少数者映画をめぐる近況

 坂川直也 Naoya Sakagawa
 2021年11月19日

2021年4月に出版された『東南アジアとLGBTの政治——性的少数者をめぐって何が争われているか。』(明石書店)に、第二章「現代東南アジアにおける性的少数者映像、その類型化の試み」という論文を寄稿した。その関連で、今回、ノーマルスクリーンの秋田祥さんから、「特集:クィア東南アジアの今 その声のいくつか」に関連して、東南アジアの性的少数者に関する映画の近況を書いてもらいたいという依頼を受け、論文以降、どういう動きがあったのかを書いてみたい。

「現代東南アジアにおける性的少数者に関する映像、その類型化の試み」で、性的少数者に関する映像をめぐる公共性について検討した。性的少数者に関する映像の公共性を検討する基準として、①アカデミックな研究、②性的少数者に関する映画祭、③国内映画祭での受賞歴の有無を用いた。そして、論文では以下のような暫定的な判断を書いた。

「東南アジアで性的少数者映像をめぐる公共性が最も高い国はタイとフィリピンで、ベトナムがそこに追いつこうとスピードを上げている。インドネシアはここ二、三年で後退し、そのインドネシアを、最近、BL(ボーイズラブ)ドラマを制作するようになったミャンマーが追い越そうとしている。」

今からすると、もっとも大きく変わったのはミャンマーの情勢である。2021年2月1日に起きたミャンマーのクーデターは、『東南アジアとLGBTの政治』の出版前ではあるが、論文の執筆後だった。現在のミャンマーでは、性的少数者に関する映像ももちろん、劇映画全般を制作するには困難な情況で、制作されるとすれば、ドキュメンタリーもしくはニュース映像に限定されるだろう。今回の特集で配信された『シンプル・ラブストーリー』(ミャンマー 2017年) は、日本での最初の上映は京都大学東南アジア地域研究研究所「Visual Documentary Project」(VDP)、2020年「愛」特集だった。私は近年、VDPの予備審査を担当していて、ミャンマーから『シンプル・ラブストーリー』以外にも、性的少数者に関するドキュメンタリーが多数応募され、やはり、ミャンマーとタイの隣国で、性的少数者に関する映像の創り手たちがたくさんいたんだなと感動した覚えがある。しかし、インドネシアを追い越そうとしていたミャンマーもクーデターによって、性的少数者に関する映像を制作できる環境から遠のいてしまった結果に、インドネシアの後退同様に、東南アジアの政治体制における不安定さが性的少数者に関する映像をめぐる公共性に影響を及ぼしていることを痛感した。




 東南アジアで性的少数者に関する映像をめぐる公共性が最も高い国は依然、タイとフィリピンで、今回の特集で、この両国の作品が配信されている点でも裏付けされている。論文で「東南アジアにおける性的少数者映像の最新潮流である、BLドラマ」と述べたが、「タイ沼」という言葉が広がるほどに、タイ発のBLドラマは、日本でも動画配信サービスなどで人気を博している。さらに、「フィリピン発BLドラマシリーズ「GameBoys(ゲームボーイズ)」の続編にあたる映画『ゲームボーイズ THE MOVIE ~僕らの恋のかたち~』が、2022年1月21日に公開される

ちなみに、この『ゲームボーイズ THE MOVIE ~僕らの恋のかたち~』は、 第8回台湾国際クィア映画祭(TIQFF)2021のクロージング作品にも選ばれている。『ゲームボーイズ THE MOVIE』のエグゼクティブ・プロデューサー、そして共同脚本家に、『ダイ・ビューティフル』(2016年)のジュン・ロブレス・ラナ監督が入っているのが興味深い。ラナ監督は『ダイ・ビューティフル』以降も、バクラをめぐるコメディ映画『The Panti Sisters』(2019年 ブラザーズではなく、シスターズというところがミソ)、アジア映画サイトAsian movie pulse選出「アジア発偉大なモノクロ映画25」の10位 、HIVに感染した15歳の少年が主人公の『Kalel, 15』(2019年)、クリスマス公開予定の最新作でコメディ『Big Night』(2021年)など 硬軟交えた性的少数者周辺の映画を監督しているので、日本未公開なのは惜しい気がする。





 タイとフィリピンの性的少数者に関する映像をめぐる公共性の高さは、トランス女性監督の活躍からも伺える。タイからは、上映会『QUEER VISIONS 2018』で、秋田さんと私が解説したプログラム「映画監督ノンタワット・ナムベンジャポンが過去16年から選んだタイのクィア短編5 本、87分。」で上映された『ディープ・インサイド』のタンワーリン・スカピシット監督は、その後、タイ初のトランスジェンダー国会議員になった。 『エロティック・フラグメンツ 1、2、3』のアヌチャー・ブンヤワッタナ監督(長編『別れの花』)は、HBO Asia初のタイ語オリジナルシリーズのドラマ『Forbidden』を共同監督、GMMTVのBLドラマ『Not Me』 (2022)の監督をされる。フィリピンからは、イザベル・サンドバル監督がニューヨークを拠点に活躍されている。彼女の現時点での代表作と呼べる『LINGUA FRANCA』(2019年)を始め、彼女の長編作品は日本で上映される機会に恵まれていない。彼女のツィッターは示唆とウィットに富んでいるので、彼女の本格的な紹介が日本でなされることを願ってやまない。もっとも、タイとフィリピンにおいてさえ、論文で、「トランスジェンダーを取り上げた作品においても、トランス男性よりも、トランス女性を取り上げた作品のほうが圧倒的に多い」と書いた状況は、いまだに変わっていない。






 同様に、今回の特集で配信された、タンサカ・パンシッティウォラクン監督『叫ぶヤギ』(2018年)のように、女性同士のカップルを取り上げた作品はタイにおいてもまだまだ少ない。余談だが、Asian Film Joint 2021のフォーラム「02. 2564年のタイとインディー映画」の配信を視聴していたら、ドンサロン・コーウィットワニッチャー(映画評論家/プロデューサー)さんのプレゼンで、政治について語ってきたタイのインディペンデント映画のうち、タイ国内で上映禁止もしくは困難だった作品4本を紹介されていて、うち2本が、『QUEER VISIONS 2018』でタイのクィア短編を選んだ、ノンタワット・ナムベンジャポン監督『空低く 大地高し』(2013年)と、『叫ぶヤギ』のタンサカ・パンシッティウォラクン監督の長編『Supernatural』(2013年)だった。秋田さんと京都でお会いした時に、タンサカ監督の作品、特に長編はタイ国内で公式に上映は難しいが、果たして、日本国内でも上映可能でしょうかという話をしたことをふっと思い出した。つまり、性的少数者に関する映像をめぐる公共性の高いタイにおいても例外はあり、政治的な作品、性器が映っている作品は上映が難しい。さらに、日本において、タイの性的少数者に関する映像作品上映と比較した場合、フィリピンは未上映作品が多い。もちろん、作品数自体が多いのもあるが、フィリピンのBLドラマの紹介とともに、フィリピンの性的少数者に関する映像作品の紹介も増加するのか、注目している。







 タイとフィリピンに追いつこうとスピードを上げているベトナムだが、男性同性愛映画『こんなにも君が好きで -goodbye mother-』(2019年) まで日本で配信されて、驚いた。ベトナムでは、性的少数者の映像作品は増えている。たとえば、『こんなにも君が好きで』主演俳優ライン・タインが出演した映画『姉姉妹妹』(2019年)、『ソン・ランの響き』の主演リエン・ビン・ファットが出演、『Mr.レディMr.マダム』(1978年)と原作が同じ、ラブコメディ『Butterfly House』(2019年)、そして、今回の特集で配信されている『フウン姉さんの最後の旅路』(2014年) を劇映画化した『ロト』(Lô Tô 2017年)など、性的少数者の姿を「親しみのある隣人」として描こうとする娯楽映画も増えている。特に、『ロト』と『Butterfly House』を監督した、フイン・トゥアン・アイン(Huỳnh Tuấn Anh)は注目すべき監督かもしれない。インディペンデント映画のほうでも、『第三夫人と髪飾り』のアッシュ・メイフェア監督はトランスジェンダーの若者を主人公にした長編『SKIN OF YOUTH』を制作中で、ノーマルスクリーンで以前『赤いマニキュアの男』(2016年)が上映された、チューン・ミン・クイ監督(『樹上の家』他)は、初老のゲイを主人公とした短編『Les Attendants』(The Men Who Wait 2021年)を撮った。しかし、2021年はコロナ禍でベトナム映画の制作本数、上映本数が減少することが予想されるので、性的少数者の映像作品にもどのような遅延や停滞をもたらすのか、先行きは不透明である。








 インドネシアでは、すっかり性的少数者に関する映画が制作されなくなってしまった。2002から2017年まで続いた「Q! フィルムフェスティバル」の休止が象徴的だった。Q! フィルムフェスティバル休止に関する、創設者John Badaluの声明文に、インドネシアにおける性的少数者に関する映画祭関係者、そして映画人たちが置かれた苦境が伺える。 ちなみにJohn Badaluは、先に述べた、タイのアヌチャー・ブンヤワッタナ監督による長編『別れの花』(2017年)、ベトナムのチューン・ミン・クイ監督による短編『Les Attendants』(2021年)のプロデューサーでもある。ただし、インドネシアにおける性的少数者映画をめぐる苦境は現在も変わらず、今にして思えば、ガリン・ヌグロホ監督『メモリーズ・オブ・マイ・ボディ』(2018年)が最後の輝きだったかもしれない。論文で取り上げた、ルッキー・クスワンディ監督にしても、ゲイに関するシットコム『CONQ』(2014年)、短編『虎の威を借る狐』(2015年) あたりがピークで、性的少数者というテーマからは退っていった。また、インドネシア映画史上初めてゲイというテーマに正面から取り組んだ『アリサン』 (2003年)で、知られる女性監督ニア・ディナタの最新作『恋に落ちない世界』(2021)もネットフリックスで10月から配信が始まった。脚本はルッキー・クスワンディ監督との共同で、近未来のディストピアSF映画である。ニア・ディナタとルッキー・クスワンディの共同脚本と言えば、ルッキー監督が女性同性愛者のカップルを主軸に据えた群像劇『太陽を失って』(2014年)の頃ではあれば、次は性的少数者のテーマにどう取り組むのか、わくわくしただろう。『恋に落ちない世界』は17歳前後の未婚である少女3人組を主人公にした、女性の自立を観客に問いかける女性映画である。そして、『メモリーズ・オブ・マイ・ボディ』と制作会社Fourcolors Filmsも、プロデューサー(イファ・イスファンシャ監督)も同じで、第22回フィルメックスで上映された、ガリン・ヌグロホの娘であるカミラ・アンディニ監督の最新作『ユニ』(2021年)も、高校の最終学年に通う、未婚の少女を通して、女性の自立を観客に問いかける女性映画だった。ちなみに、『ユニ』に出演している女優アスマラ・アビゲイル(1992年~)は、『恋に落ちない世界』にも出演していて、彼女はガリン・ヌグロホ監督『サタンジャワ』(2016年)主演女優でもある。

さらに、2017年の東京国際映画CROSSCUT ASIA提携企画「カラフル! インドネシア2」の『インドネシア短編映画傑作選』で上映された短編『申年』(2016年)の新鋭監督レガス・バヌテジャ監督(1992年~)による、長編デビュー作『PENYALIN CAHAYA (Photocopier) 』は、パーティに参加し、意識を失った大学生の女性が、自撮りした写真をネットで拡散され、幼なじみと自撮り写真流出とパーティの夜の真相を明らかにするミステリーで、2022年1月13日にネットフリックスで配信予定である。このように、インドネシアの先鋭的な監督たちがこぞって最新作で、10代後半の少女たちを主人公に据えている点で共通していて、注目に値する。つまり、インドネシアでは、性的少数者に関する映画が制作されなくなってしまったが、代わりに10代後半の少女たちという主題が台頭してきた。彼女たちが直面する苦闘や葛藤を映し出すことで、社会的弱者への暴力、理不尽を浮かび上がらせ、観客に問いかける作品は健在であると言えるだろう。時代の潮流と制約の中で、性的少数者という題材が10代後半の少女たちへと変化したのだ。これらの少女たちの映画が、将来の性的少数者に関する映画のさらなる飛躍につながるのか、単なる退潮や衰退に終わるのか、現時点では正直、予想がつかない。しかし、個人的には、インドネシア、そして、ミャンマーにおいて、性的少数者の映像作品が復活する日を待ち望んでいる。スコールが通り過ぎるのを待つように。




 

『ビン君の花園』について(グエン・クオック・タイン寄稿)

特集[クィア東南アジアの今 その声のいくつか]のためにベトナムの作品を2つ、ハノイを拠点にするアーティスト/キュレーターのグエン・クオック・タインさんに選んでもらいました。その1つ、グエン・ズイ・アイン監督の『In Bloom ビン君の花園』日本初公開にあわせ、寄稿してくれたエッセイを日本語に翻訳して公開します。



Text by Nguyễn Quốc Thành



 

まず、画像のリアリズムがオフになる。映画が始まると画面は真っ黒になり、白い文字で説明的なテキストが表示される。そして、現実か幻想にいるか分からないような渡り鳥の鳴き声だけが聞こえる。現場の音そのものが2つ目のシーンで消えたとたん、鮮やかな深紅のバラが真ん中に現れ、画面の大部分を占める。花の周りの背景はボケ表現の効果でぼやけはじめる。そこでは空間も時間も分からない。3つ目のシーンに入り、紫色の植木鉢に放物線状の水が注がれ、4つ目のシーンでカメラが移動しキャラクターに着目し瞬間に花園と庭師がはっきりと見えるようになる。「ここは遥か昔にできた、私の花園」と彼が言う。

彼の名前はビン。北部の田舎の伝統とカトリック教会の文化が混ざり合った農村に住んでいる。ナムディン省のハイハウにあるこの花園は教会の二つの塔の陰に咲いている。鳥のさえずりはない。花卉園芸から夕食、聖歌の練習、歌と踊りのスキル、そして彼がオンラインで知り合った恋人のことまで、彼はとりとめのない話をしている。そして、カトリック教会における同性愛者に対する恐ろしい罰についてのこと。彼は微笑みながら語る。夜、彼氏の話をしているところに賛美歌が割り込んでくる。カメラは浮いているかのように、教区民の顔、彼らが歌を練習している部屋、神の祭壇の上をなぞっていく。すぐ隣の小部屋で、ビン君はイヤホンをつけてコンピューターの画面を見つめている。彼は全く別のことに忙しいようだ。もしかしたら、恋人とおしゃべりしているのかもしれない。





ズイ・アイン監督の本作の登場人物は社会的ドキュメンタリーのキャラクターとして実に魅力的な存在だ。 とてもロマンチックな花農家で同性愛指向をもつカトリック信者であると同時に、北部の田舎の家族の長男。現代の大都市に住む人/学生、ジゴロや芸能人や金持ちなどというベトナム映画の一般的な同性愛者のモチーフとは、かけ離れたキャラクターだ。そうした映画のモチーフは社会のステレオタイプとさほど変わらず、そうした役に登場人物を閉じ込めてしまう。長男というのは、結婚して子供をもうけて家系を継ぐという話と無縁でいられない。カトリック信者に対しては、男同士の恋愛は秘密の話だ。しかし、ズイ・アイン監督は、キャラクターを明確に定義することを避けている。鏡に反射するビン君と彼の声の両方によってビン君が「複製」される箇所では、現実が虚構によって複製される。映画の冒頭の2つのシーンが別の物語、すなわち映画の物語を呼び起こす。それは日常の記録から夜の風景への移り変わりの再現である。ビン君は蚊帳を下ろして眠り、超現実的なイメージや音、そしてエロティックな夢に耽溺する。映画は登場人物を現実から夢へと導く。 映画の冒頭の鳥のさえずりは、その夜の夢の中で魔法のように繰り返され、時間を遡ってこだまし、現実の昼間のシーンをロマンチックで空想的な魅力あるものにしている。





グエン・クオック・タイン
ハノイを拠点に写真からパフォーマンスまで幅広いメディアで表現するアーティスト&キュレーター。ポーランドのワルシャワ大学で修士号を取得。ハノイでアーティスト集団Nhà Sàn Collectiveに所属し活動する傍ら、Queer Forever!というクィアアートフェスティバルを2013年より開催し、検閲の厳しいベトナムで国内外の作品を紹介しトークイベントなども催している。2014年には日本国際パフォーマンスアートフェスティバル(ニパフ)で来日し東京、長野、宮崎でパフォーマンス作品を発表。



本記事公開日:2021年11月10日
翻訳:チャン ティ トゥイト ミンさん
編集協力:小田ならさん

 

ノーマルの気になる催し物リスト2021年11月

Normal’s List
November 2021

10/2(土)〜2022/1/10(月) M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話(ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌) ◎アーティゾン美術館 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/64

10/14〜2022/3/6 ギルバート&ジョージ展「CLASS WAR, MILITANT, GATEWAY」 ◎エスパス ルイ・ヴィトン東京 https://www.espacelouisvuittontokyo.com/

10/16(土)〜11/14(日) エキソニモ展「CONNECT THE RANDOM DOTS」 ◎waitingroom_ https://waitingroom.jp/exhibitions/connect-the-random-dots/

10月27日(水)- 11月1日(月) 演劇「ポロポロ、に」(ほろびて) ◎BUoY https://horobite.com/play/poroporo/

10/30(土) 繋がる、東南アジア、ろうコミュニティと(ゲスト:山本芙由美さん) ◎オンライン http://normalscreen.org/events/yf  ★

10/30(土)〜 映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』 ◎渋谷シアター・イメージフォーラム他 http://www.zaziefilms.com/monos/

10/30(土)〜11/7(日) 第22回東京フィルメックス ◎有楽町朝日ホール(10/30-11/7)、ヒューマントラストシネマ有楽町 https://filmex.jp/

10/30(土)〜11/19(金)  映画『愛のくだらない』 ◎池袋シネマ・ロサ https://kudaranai-movie.com/

10/30(土)〜 映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』(APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA) ◎オンライン https://www.bunkamura.co.jp/cinema/apartment/films/article?id=20211007

10/30(土)〜11/7(日) 第18回ラテンビート映画祭 in TIFF ◎TOHOシネマズ シャンテ、シネスイッチ銀座 https://www.lbff.jp/

10/30、11/1 映画『スワン・ソング』(東京国際映画祭) ◎シネスイッチ銀座、有楽町よみうりホール https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3404WFC06

11/ 2(火) シンポジウム「ジェンダー格差、労働環境、日本映画のこれからを考える」(Japanese Film Project、東京国際映画祭、Choose Life Project) ◎オンライン https://jfproject.org/

11/3(水・祝) Living Together「オンラインLIVEショー」生配信(コミュニティセンターakta) ◎オンライン https://www.youtube.com/channel/UCJqacR55ahhx3sIIv3UTuAw

11/3(水・祝) シンポジウム「映画と労働2 世界の撮影現場とハラスメント対策」(独立映画鍋、東京フィルメックス) ◎オンライン http://eiganabe.net/2021/10/25/2679

11/5(金) 講演会『ブラック・フェミニズムの歴史とインターセクショナリティ』(同志社大学アメリカ研究所) ◎オンライン https://www.america-kenkyusho.doshisha.ac.jp/news/2021/1006/news-detail-177.html

11/5(金)〜19(金) 新千歳空港国際アニメーション映画祭 ◎空港、オンライン https://airport-anifes.jp/

11/6(土) 映画『クィアコア-革命をパンクする方法』+トーク ◎岡山ブルーブルース https://fb.me/e/2tkVsYLaM

11/6(土)〜11/7(日) つながる!ガリ版印刷発信基地 フィナーレ・ZINE祭り(Hand Saw Press、東京芸術祭) ◎トランパル大塚 https://tokyo-festival.jp/2021/program/h-s-p

11/6(土)〜11/12(金) Dance New Air/ダンスフィルム 2021 ◎シアター・イメージフォーラム https://dancenewair.tokyo/2020/dancefilm/

11/6(土)〜 映画『これは君の闘争だ』 ◎シアター・イメージフォーラムほか全国順次 https://www.toso-brazil.jp/

11/6(土)〜 映画『記憶の戦争』 ◎ポレポレ東中野ほか https://www.sumomo-inc.com/kiokunosensou

11/7(日)〜11/23(火) 第22回東京フィルメックス ◎オンライン

11/10(水)〜 映画『PASSING -白い黒人-』 ◎Netflix https://www.netflix.com/jp/title/81424320

11/10(水) 本「クィア・シネマ・スタディーズ」(晃洋書房) http://www.koyoshobo.co.jp/book/b594003.html

11/12(金)〜 映画『ボストン市庁舎』 ◎Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか https://cityhall-movie.com/

11/12(金)〜 映画『梅切らぬバカ』 ◎シネスイッチ銀座ほか全国 https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/

11/12(金)〜 映画『tick, tick...BOOM! チック、チック…ブーン!』 ◎イオンシネマほか https://youtu.be/8z1qV_iWLBM

11/13(土)〜2022/2/23(水) 久保田成子展「Viva Video!」 ◎東京都現代美術館 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/shigeko_kubota/

11/14(日)〜 映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』 (山形国際ドキュメンタリー映画祭) ◎オンライン http://online.yidff.jp/event/acadfa

11/15(月)〜12/15(水) TOKYO AIDS WEEKS 2021 https://aidsweeks.tokyo/

11/16(火)〜11/30(火) 若林 佑真 フォトエッセイ「Complex」 ◎プライドハウス東京レガシー https://pridehouse.jp/legacy/event/378/

11/17(水) 映画『リトル・ガール』公開記念トーク(イシヅカユウ、鈴木みのり、haru.) ◎本屋B&B、オンライン http://bookandbeer.com/event/bb211117a/

11/19(金)〜 映画『リトル・ガール』 ◎新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次 https://senlisfilms.jp/littlegirl/

11/20(土) 「トランスジェンダーの権利と尊厳 ~Transgender Day of Remembrance in Japan~」(畑野とまと、若林佑真) ◎プライドハウス東京レガシー https://pridehouse.jp/legacy/event/378/

11/20(土)〜2022/2/23(水) クリスチャン・マークレー展「トランスレーティング 翻訳する」 ◎東京都現代美術館 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-211113/

11/18(木)〜11/21(日) ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021(『未来は私たちのもの』など) ◎渋谷ユーロライブ https://www.goethe.de/ins/jp/ja/kul/sup/h21.html

11/21(日) シンポジウム「BLとメディア」(日本マンガ学会) ◎オンライン https://www.jsscc.net/convention/2021_symposium

11/22(月)、23(火) Experimental film culture vol.3.5 in Japan ◎東中野のポレポレ坐 http://efcjp.info/

11/22(月)〜11/23(火) アンダーグラウンド・シネマ・フェスティバル:アングラの巨匠・岡部道男を中心に(エス・アイ・ジー/Art Saloon) ◎三鷹・SCOOL https://ucf1.art-saloon.site/

11/22(月)〜11/28(日) アノーチャ・スウィチャーゴーンポン特集上映&フォーラム(Asian Film Joint) ◎福岡・KBCシネマ、オンライン https://asianfilmjoint.com/

11/27(土) Queer Visions 2021 ◎Lumen Gallery、一部オンライン http://normalscreen.org/events/qv2021  ★

11/27(土)〜 映画『水俣曼荼羅』(原一男新作) ◎渋谷 シアター・イメージフォーラム他全国順次 http://docudocu.jp/minamata/

11/27(土) あんにょんパンド読書会『話し足りなかった日』(ゲスト:小林美香) https://qpptokyo.com/news/61717cc12b3ca15a4861a51d

11/29(月) 本『あいつゲイだって——アウティングはなぜ問題なのか?』(松岡宗嗣 著|柏書房) http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b594219.html

Queer Visions 2021 © How Old Are You? How Old Were You? 入世 by Cherlyn Hsing-Hsin LIU ​劉行欣

その頃、インターネットでは...

・きたまり/KIKIKIKIKIKI『老花夜想(ノクターン)』アーカイブ配信(11/18〜30|東京芸術祭) https://tokyo-festival.jp/2021/program/kitamari

・『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』監督ステフ・アラナス、オンライントーク (立教大学ジェンダーフォーラム、ノーマルスクリーン|11/18まで) https://vimeo.com/629663369  ★

・『叫ぶヤギ』(11/7まで) http://normalscreen.org/events/sakebuyagi  ★

・『シンプル・ラブストーリー』(11/15まで) http://normalscreen.org/events/simplelove

・川崎市市民ミュージアム 被災収蔵品レスキューの映像記録 https://www.kawasaki-museum.jp/rescue/movie/

・全国の通販で買える個人書店一覧(里山社、WEBmagazine温度、エトセトラブックス) https://note.com/satoyamasha77/n/n351c10016b7e

・「精神というエネルギー|石・水・森・人」(『対話と創造の森』誕生記念フォーラム記録映像) https://youtu.be/kONXFEkamlc

・In Bloom ビン君の花園 http://normalscreen.org/events/inbloom

シンプル・ラブストーリー

『叫ぶヤギ』解説:空っぽな同じ時間

特集:クィア東南アジアの今 その声のいくつか
Unmasked Queer Voices from Southeast Asia Today

Sho Akita | October 27, 2021

私は2016年6月に、国際交流金アジアセンターのリサーチフェローとしてバンコクを訪れ、現地のアーティストやキュレーターに会い、彼らが集う空間を訪問する機会も得た。“タイのクィアの映像作家”といえば私のなかではアピチャッポンではなくタンサカだった。2000年ごろから精力的に発表されてきた彼の作品をまとまったかたちで観ていたわけではなかったのに、なぜそう思ったのか。彼の作品でよく登場する若い男性の裸のイメージが頭にこびりついていたからかもしれない。

直接会いたいと彼にEメールで問い合わせ、バンコク市内からバスで1時間半ほどのタイ・フィルム・アーカイヴで、会うことになった。彼はここで、小さなクルーとテレビ番組の撮影をしていた。私が到着するなり休憩がてら話をしてくれたタンサカは、正直、見た目は怖いが、話すとむしろシャイな印象。

しかし、このとき彼は、タイ政府から目をつけられないように、あるいは既に目をつけられているからか、あまり自身の情報をださないようにしていると言い、作品についてもそこで撮影していた“テレビ番組”のことも詳しくは話してくれなかった。しかし、作品の多くを鑑賞させてくれた。現在でも私は新作が出れば見せてもらっている。

彼が丁寧に話してくれたのは、ナショナリズムの始まりについての考察が書かれた『想像の共同体』で知られ、東南アジアの研究者でもあったベネディクト・アンダーソンのことだった。直接交流のあったアンダーソンにいかに影響を受けたか、という話だったと思うがアンダーソンの名前をだすゲイのアーティストがこの調査の間だけで他にも2人ほどいたことも私には印象に残っている。アンダーソンが逝去したのがその半年前、2015年の末だったことも関係があるのかもしれない。

タンサカが日本で『叫ぶヤギ』の上映のために来日した際にも述べているように、彼は本作の撮影地パッターニー県にも近いパダンベザール出身だそうだ(私が会ったときには幼少期だけをそこで過ごしたと言っていた)。それなのになぜ主にバンコクやその周辺だけで撮影をするのか、なぜタイ南部で作品を作らないのかをアンダーソンに問われたことをきっかけに、タンサカはタイの抱える国境付近の問題を通し、タイ王室や政治の闇をあつかった作品を積極的に手がけ始める。

彼の複雑な作品群を簡単な説明にまとめることはできないが、多くの作品が、ナレーションはないがそれがテキストで映像に現れるドキュメンタリーや、簡単な設定(例えば、被写体が生徒、カメラが先生など)を登場人物らが共有した状態で撮られた映像をドキュメンタリーとして完成させたりと、実験的に編集されている。詩のようなテキストが映像上に表示されることも少なくない。2014年には劇映画にも挑戦し『Supernatural』を発表している。

2009年に発表された『This Area Is Under Quarantine』あたりの作品からは、宇宙を意識させられる壮大なイメージやSF的な作品が多い。その一方、タイ国内で過去に起こったとされる(でもあまり知られていないと思われる)軍事政権や権力者による虐殺など、目を覆いたくなるほどおぞましい写真やアーカイヴ映像が多く映し出され、その背景説明もテロップで明確に表示されたりする。そしてほぼ全ての作品で、若い逞しい男たちが登場する。彼らは、ときに昔のコカコーラのCMのモデルのように海岸で爽やかに笑い、別の作品では暗い部屋で今にも殴りかかってきそうな目でカメラを睨む。母親、セックス、軍、豊かな景観。あるゲイのプライベートな時間、公けの空間での時間。それらの視線や映像が挑発的にモンタージュされる。制限される表現とタイの主流文化で消されるイメージ。その監視と抑圧を跳ね返すように激しく絡み合う身体を見せたり、汗を弾く肌を欲望のままに長回しで見つめる。

しかし『叫ぶヤギ』は違う。『叫ぶヤギ』は実は、2017年にタンサカが注目の若手アーティストのハリット・スリッカオと共同で監督した103分の長編ドキュメンタリー 『Homogeneous, Empty Time』の一部分だ。クーデターが起きた2014年とプミポン王が亡くなった2016年の間に撮影されている。タイトルはアンダーソンが引用したベンヤミンの言葉「均質で空虚な時間」(empty, homogeneous time) からきている。

予告映像の印象とは違い、この映画本編ではとてもゆっくりと目の前の状況を見せるシーンが多い。大きく分けて4つの異なる生活や視点をもった集団の日常を丁寧なインタビューと撮影で順に見せていき、ところどころにそれらの人々を覆う君主制と軍の存在がテレビニュースや街の広告などで挿入され、権力側による市民への暴力の歴史も時に寓話または怪談のように言及される。

他には、キリスト教系の男子寮、士官学校(軍学校)、仏教の名の下に王室を崇拝する集団が登場する。映画冒頭、キリスト教系の寮でふざける少年たちは、夜はサッカーの試合をテレビで観戦するも突如はじまる軍政府のPRに文句を言い、リラックスした雰囲気だ。士官学校も一見少年たちは生き生きとしているように見えるが、そのシークエンスの終わりには学校内の暴力事件の証拠写真も大量に映画は見せる。王のために集う人々の様子は、カルトのようである。穏やかな夕方6時、国歌が流れ、止まる。

『叫ぶヤギ』の撮影地であるパッターニー(パタニ)では、タイ全体ではマイノリティであるマレー系ムスリムの人々が人口の8割だ。登場するカップルは、ムスリムではないアンティチャー・セーンチャイとダーラーニー・トーンシリだ。二人は、BUKUという本屋を2011年にひらき、さらにジェンダーやセクシュアリティや人権に関して学ぶセミナーも開催しているという。映画にも少し映るサッカーは、彼女らの活動の一部であるBuku Football Clubで、現地の女性が参加しやすい環境を作りトーナメントでも競っている。クラブには現在、レズビアンやバイセクシャルであることをオープンにする10代もふくむ70人以上のメンバーがいる。その集まりを通しジェンダーやセクシュアリティをとりまく問題を訴え、性に関する健康の知識などを深めながら、活動をしている。

アンティチャーは本作上映のために来日した際にこう語っている。「(『叫ぶヤギ』で語られることは)実際に起こったことなのですが、タイでは真実を語ることができません。」

2020年のデモが起こったバンコクだけではなく、それ以外のタイの地域のことを、タンサカの作品ともに今後も注目したい。

参考:

・タイ現代文学覚書 44 「個人」と「政治」のはざまの作家たち(福冨渉 著|風響社)) http://www.fukyo.co.jp/book/b341368.html)

・Football in hijab: Thai Muslim lesbians tackle stereotypes (Reuters | Nov. 20, 2020) https://jp.reuters.com/article/us-thailand-lgbt-sport/football-in-hijab-thai-muslim-lesbians-tackle-stereotypes-idUSKBN28A0BR 

・情報提供:坂川直也さん

・2016年に秋田がバンコク訪問時に話を聞いた他のアーティスト ジャッカイ・シリボは、国境沿いの村タクバイで起こった事件をもとに作品を制作している。http://normalscreen.org/blog/jakkais 

本記事公開日:2021年10月27日
編集協力:Jun Fukushima(Political Feelings Collective
写真:Sleep of Reason Films

ノーマルの気になる催し物リスト2021年10月

Normal’s List
October 2021

8/17(火)〜10/10(日) 山城知佳子展「リフレーミング」 ◎東京都写真美術館 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4023.html

9/25(土)〜10/10(日) 展示「ふとった女、Q」(CHITO、岡本美穂、宇和島英恵) ◎ニュースペース パ、神宮前2丁目商店街 外壁面 https://www.instagram.com/fatlady.q/

9/29(水)〜10/10(日) 森栄喜[雷電 Dialogue] ◎KEN NAKAHASHI https://kennakahashi.net/ja/exhibitions/raiden-dialogue

10/1(金)〜 映画『TOVE/トーベ』 ◎新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか https://klockworx-v.com/tove/

10/1(金)〜 映画『私の名はパウリ・マレー』 ◎オンライン(Amazon Prime Video) https://youtu.be/Uh4r95VBU2Q

10/1(金)~12/19(日) 庵野秀明展 ◎国立新美術館 https://www.nact.jp/exhibition_special/2021/annohideaki2021/

10/2(土) 『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』監督ステフ・アラナス、オンライントーク (立教大学ジェンダーフォーラム、ノーマルスクリーン) ◎オンライン http://normalscreen.org/events/aranas ★

10/2(土)〜 映画『コレクティブ 国家の嘘』 ◎シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか https://transformer.co.jp/m/colectiv/

10/3(日) NOT ALONE CAFE ◎オンライン https://twitter.com/NotAloneCafe

10/7(木)〜10/14(木) 山形国際ドキュメンタリー映画祭2021 ◎オンライン https://www.yidff.jp/

10/9(土)〜10/24(日) PUNK! The Revolution of Everyday Life ◎北千住BUoY https://buoy.or.jp/program/punk%E3%80%80/

10/11(月)〜 映画『沖縄カミングアウト物語〜かつきママのハグ×2珍道中!〜』 ◎オンライン https://twitter.com/hiroakicomihug

10/12(火) 映画『悲しみに、こんにちは』 ◎東京都写真美術館 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-4164.html

10/14(木)〜 映画『恋に落ちない世界』 ◎オンライン(Netflix) https://www.netflix.com/jp/title/81327370

10/15日(金)〜 映画『DUNEデューン 砂の惑星』 ◎全国公開 https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/

10/15(金)〜10/31(日) トランスジェンダー映画祭2021 ◎オンライン https://transmovie2021.peatix.com/

10/17(日) 足立レインボー映画祭 ◎東京芸術センター 天空劇場 https://sites.google.com/view/adachirainbowfilmfestival/

10/17(日) Stilllive: Performance Art Summit Tokyo 2021-2022──衛生・変身・歓待 ◎ゲーテ・インスティトゥート東京 https://stilllive.org/activity

10/18(月)〜10/23(土) 上映「佐藤真 その検証と継承」 ◎アテネ・フランセ文化センター http://www.athenee.net/culturalcenter/program/sa/sato.html

10/21(木) 本「佐藤真の不在との対話」発売(里山社) http://satoyamasha.com/

10/23(土)〜11/12(金) Dance New Air 2020->21 ◎草月ホール、SHIBAURA HOUSEなど https://dancenewair.tokyo/2020/

10/26(火) 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』PART1 ◎全国の劇場 https://www.tc-ent.co.jp/sp/backtothe4Kfuture/

10/28(木)〜31(日) Tokyo Art Book Fair 2021 ◎東京都現代美術館、オンライン https://tokyoartbookfair.com/

10/29(金) 映画『ホックニー』(2014) DVD発売(IVC) http://www.ivc-tokyo.co.jp/titles/ha/a0547.html

10/30(土)〜 映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』 ◎渋谷シアター・イメージフォーラム他 http://www.zaziefilms.com/monos/

『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』

『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』

その頃、インターネットでは...

・彼の髪の色 on Normal Screen http://normalscreen.org/blog/colour ★

・It's a Sin Podcast(スターチャンネル)on Spotifyなど https://twitter.com/starchannel/status/1430047220343074824

・ラッシュ(RUSH)裁判オンライン報告会(ラッシュ(RUSH)の規制を考える会) https://youtu.be/xvzNzHLMSBo

・ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン” on Normal Screen http://normalscreen.org/events/aranas ★

・ブリトニー対スピアーズ -後見人裁判の行方- on Netflix https://youtu.be/SgFDWK_sf9c

・New Directions in Japanese Cinema短編作品 on Netflix https://www.netflix.com/jp/title/80203331

・Queer Japan クィア・ジャパン on GagaOOLala https://www.gagaoolala.com/en/videos/2296/queer-japan-2019




Say What U Want ステフ・アラナス|歌詞翻訳

SEA-logo-web.png

Say What U Want
By Stef Aranas

今更電話してくる あなた

自分が悪かったと認めるって

それが何の役に立つの?

“ごめんね”じゃ食っていけない


だから もう選択肢はない

信頼もないから さよならベイビー

だまくらかせると思わないで

そんなの私が許さない

どうぞ何とでも言って

あなたはもう この身をめぐる血じゃない

あなたに傷つけられたのは むしろ恵みだった

勝ったのは私

あなたじゃないの

どうあがいても変わらない

あなたはもう この身をめぐる血じゃない

この傷は恵み 自分の足で立てたから

勝ったのは私

あなたは もう関係ない

どうあがいても変わらない

勝てない相手に出会っちゃったね

生まれて初めて知ったでしょ

こんな女がいるなんて

あなたが消えて 幸せになる女が

あなたとは さよならするから

同じくらい愛してくれる人を探して

私はそうならないから

もう二度とそうならないから

頑張って他を見つけてね

どうぞ何とでも言って

あなたはもう この身をめぐる血じゃない

あなたに傷つけられたのは むしろ恵みだった

勝ったのは私

あなたじゃないの

どうあがいても変わらないから

あなたはもう この身をめぐる血じゃない

この傷は恵み 自分の足で立てたから

勝ったのは私

あなたは もう関係ない

どうあがいても変わらないから

強い女に男はいらない

バッド・ビッチに男はいらない

ねえ あなたはバッド・ビッチ?

大事なことだよ 覚えておいて

バッド・ビッチに男はいらない

バッド・ビッチに男はいらない

ねえ あなたもバッド・ビッチ?

そう 私は私を分かってる


・翻訳:佐藤まな(2021年9月)
・アラナスの映画『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』でこの曲は使用されています。
・この曲は、アラナスが制作していた映画『Your Biggest Fan』の主人公のお気に入りの歌として制作された。この歌は、主人公の歌手になるという夢を象徴するものであり、当時のローカルのポップソングを反映している。

Unrest –不安– by ステフ&ユウジ|歌詞翻訳

SEA-logo-web.png

– Unrest –不安–
by Stef & Euge

たくさんの人の命を握ってるのに

厚かましくも 私たちを軽んじる

こんなふうに こんなふうに

フィリピンの未来は

輝かしいもののはず

こんなんじゃない 全然こんなんじゃない

なのに あなたは脅し続ける

一生懸命やってる人々を

自分のことを顧みたら?

不安しか伝わりませんよ 閣下

そんなに私たちを苦しめたいの?

責務を全うする気はないの?

母なる祖国を抑えつけるなんて

これまでの責めを負うべき時に

今は

そんな場合じゃない

テレビでデタラメ言わないで

これは

取るに足らないゴシップや

怒りの吐き出しなんてもんじゃない

これは

私たち全員の問題

何百万もの人々がテレビをつける

何かの救いや 具体的な指針を求めて

もしもし?


またあなたが話し出すから

期待して耳を傾ける

でも いつもどおり意味不明

計画くらい用意してくださいな 閣下

そんなに私たちを苦しめたいの?

責務を全うする気はないの?

母なる祖国を抑えつけるなんて

これまでの責めを負うべき時に

ウイルスの抑え込みが急務

でも もう支配体制に入り込んでたら?

守るべき命を殺してるなら?

ウイルスの抑え込みは急務

でも もう支配体制に入り込んでるみたい

今は殺しがあなたの“規律”

閣下 聞いてる?

黙って苦しめられてなんかいない

責務を果たすよう求める

母なる祖国の主は私たち

責任を取らせるまで 決して止まらない

・翻訳:佐藤まな(2021年9月)
・アラナスの映画『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』のエンディングでこの曲は使用されています。
・ステフ&ユウジ Instagram https://www.instagram.com/stefandeuge/

ノーマルの気になる催し物リスト2021年9月

Normal’s List
September 2021

最新情報や詳しい情報はそれぞれのウェブサイトなどで確認してくださいね。

8/13(金)~11/30(火) ジュリオ・ル・パルク展「ル・パルクの色 遊びと企て」 ◎銀座メゾンエルメス フォーラム https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/210813/

8/17(火)—10/10(日) 山城知佳子展「リフレーミング」 ◎東京都写真美術館 http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4023.html

8/25(水)〜9/26(日) グループ展「one's signal—後期」 ◎KEN NAKAHASHI https://kennakahashi.net/

8/25(水)〜9/5(日) 齋藤彰英展「東京礫層:Tokyo Gravel」(オープン・ウォーター~水(*)開く~) ◎iwao gallery https://openwater-mizuhiraku.com/tokyogravel/index.html

8/27(金)〜 映画『愛のくだらない』 ◎テアトル新宿 http://kudaranai-movie.com

9/1(水)〜9/19(日) Lost in Translation(川嶋 渉、笹岡由梨子、ウーカシュ・スロヴィエツ、高田冬彦、TŌBOE (西條茜+バロンタン・ガブリエ)、ピョトル・ブヤク、アリツィア・ロガルスカ) ◎京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2021/7078/

9/3(金)〜5(日) 標本空間vol.1 「無選別標本集」 @北千住BUoY http://samplenet.info/play/space01/

9/3(金)〜 映画『アナザーラウンド』(『偽りなき者』のトマス・ビンターベア新作) ◎新宿武蔵野館、ヒューマントラスト有楽町、渋谷シネクイントほか https://anotherround-movie.com/

9/5, 12, 19, 26 東南アジアろうLGBTQ会議2021 ◎オンライン https://deaf-lgbt-center.jimdofree.com/

9/6(月) シンポジウム「文学と法におけるLGBTQ ~李琴峰氏が語る台湾日本のLGBTQ文学と法制度」(李琴峰、セン・ラージ・ラキ、菅野優香) ◎同志社大学烏丸キャンパス志高館 http://drc-fgss.com/2021/09/01/

9/10(金)~9/30(木) フランソワ・オゾン初期作品特集(『Summer of 85』公開記念 特別上映) ◎Bunkamura ル・シネマ https://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/5256.html

9/11(土) 講演 関根信一:「自分とは違う人」も大切にできる世界を 演劇をとおして続けてきたこと(人権(LGBT)講座実行委員会) ◎小平市福祉会館  https://www.city.kodaira.tokyo.jp/event/091/091982.html

9/12(日)  日本Lばなし第20話「私が“クィア”を名乗る理由~マイノリティ×マイノリティを生きる~」ゲスト:岩川ありさ(パフスクール) ◎オンライン https://paflhistory20.peatix.com/

9/12(日)〜9/17(金) ナワポン・タムロンラタナリット監督特集(ぴあフィルムフェスティバル) ◎国立映画アーカイブ  https://pff.jp/43rd/lineup/nawapolthamrongrattanarit.html

9月14日(火)~10月10日(日) 石原海展(第15回 shiseido art egg) ◎資生堂ギャラリー https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/4343/

9月15日(水) 呉春生講演会「中国の同志『運動』」(KOSS一般公開イベント) ◎オンライン https://twitter.com/koss_ut/status/1430738602154086401

9/17(金) 雑誌 IWAKAN3号 特集:「政自」 https://www.instagram.com/iwakanmagazine/

9/17(金)〜10/3(日) 「IWAKAN MAGAZINE 3rd EXHIBITION −政自−」 ◎tata-books https://tata-books.com/gallery/234/

9/17(金)〜 ドラマ「セックス・エデュケーション」シーズン3 ◎Netflix https://youtu.be/gk6Q6YXg5nk

9/17(金)~2022年1/10(月) サンリオ展「ニッポンのカワイイ文化60年史」 ◎東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー) https://sanriocharactermuseum.com/

9/18(土) & 19(日) 第21回中之島映像劇場「美術館と映像―ビデオアートの上映・保存―」 ◎国立国際美術館 https://www.nmao.go.jp/events/event/theater_vol21/

9/20(月・祝) 韓国の絵本(loneliness books)  ◎Bar Tac's Knot https://qpptokyo.com/news/6140e0a2603feb7b0fcb5e08

9/22(水) 「女性の人権と安全」を大義名分としたトランスジェンダーへのヘイト言論について考えるトーク・セッション ―当事者支援の立場から ◎オンライン https://shelterkikaku.peatix.com/

9/23(木)〜 映画『整形水』(韓国アニメーションサイコホラー) ◎全国公開 https://seikeisui.jp/

9/24(金) 『息子の部屋』ブルーレイ発売(IVC) http://www.ivc-tokyo.co.jp/titles/ma/a0544.html

9/25(土)〜10/3(日) イメージフォーラム・フェスティバル2021 ◎シアター・イメージフォーラム、スパイラルホール http://www.imageforumfestival.com/bosyu2021/

9/25(土)〜10/10(日) 展示「ふとった女、Q」 (CHITO、岡本美穂、宇和島英恵) ◎ニュースペース パ、神宮前2丁目商店街 外壁面 https://www.instagram.com/fatlady.q/

9/27(月)〜10/18(月) 映画『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』配信(ノーマルスクリーン) ◎オンライン http://normalscreen.org/events/aranas

10/1(金)〜 映画『TOVE/トーベ』 ◎新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか https://klockworx-v.com/tove/

10/2(土) ステフ・アラナスさんとオンライントーク『ひとまずさよなら “ユア ビゲスト ファン”』監督 (立教大学、ノーマルスクリーン) ◎オンライン http://normalscreen.org/events/aranas

「ふとった女、Q」 (CHITO、岡本美穂、宇和島英恵)https://www.instagram.com/fatlady.q/   

「ふとった女、Q」 (CHITO、岡本美穂、宇和島英恵)https://www.instagram.com/fatlady.q/   

 

その頃、インターネットでは...

・「ファッション イン ジャパン 1945-2020―流行と社会」関連イベントの記録映像配信 https://www.nact.jp/exhibition_special/2020/fij2020/
https://vimeo.com/user/119070984/folder/4473659

・ホー・ツーニェン(何子彦)『反射光』『Newton』配信 on 森美術館 https://www.mori.art.museum/jp/mamdigital/02/index.html

・「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」作家インタビュー映像配信 on 森美術館 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/anotherenergy/02/index.html

・『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』紹介記事 on JaNP_plus https://janpplus.jp/topic/719

・It's a Sin Podcast (スターチャンネル)on Spotifyなど https://twitter.com/starchannel/status/1430047220343074824

・「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展 オンライン展示アーカイブ on 東京都現代美術館 https://www.mot-art-museum.jp/events/2021/08/eikoishioka_special/

・ラッシュ(RUSH)裁判オンライン報告会(ラッシュ(RUSH)の規制を考える会) https://youtu.be/xvzNzHLMSBo

・彼の髪の色(短編映画|ノーマルスクリーン )  http://normalscreen.org/blog/colour  ★

・映画『Rocks/ロックス』 (APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA) https://www.bunkamura.co.jp/cinema/apartment/

・「キース・ヘリング〜ストリート・アート・ボーイ〜」 (ドキュメンタリー|配信|MadeGood)https://www.madegood.com/keith-haring-street-art-boy/

・全国の通販で買える個人書店一覧(里山社、WEBmagazine温度、エトセトラブックス) https://note.com/satoyamasha77/n/n351c10016b7e

・入管・難民問題 特集(毎日新聞) https://mainichi.jp/immigrationjpn/

ノーマルの気になる催し物リスト2021年8月

Normal’s List
August 2021

東京中心ですが、気になるイベントを並べています。
緊急事態宣言下で予定の変更も多いので詳細はそれぞれのウェブなどで確認してね!

7/17(土)〜 映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(インド、牛追いワイルドスピード映画) ◎シアター・イメージフォーラム他にて http://www.imageforum.co.jp/jallikattu/

7/30(金)〜 映画『イン・ザ・ハイツ』https://wwws.warnerbros.co.jp/intheheights-movie.jp

7/30(金)〜 映画『返校』 ◎TOHOシネマズシャンテほか 全国 https://henko-movie.com/

7/30(金) 村岡由梨詩集「眠れる花」発売 https://bit.ly/3kJBO5Z

7/31(土)〜 映画『日常対話』 ◎ポレポレ東中野 https://www.smalltalktw.jp/

~9/6(月) ファッション イン ジャパン 1945-2020―流行と社会 ◎国立新美術館 https://fij2020.jp/

8/1(日)〜 読書会 キエセ・レイモン『ヘヴィ あるアメリカ人の回想録』(山田文訳、里山社、2021年) ◎西荻窪 忘日舎、オンラインメイン https://vojitsusha.stores.jp/items/60b81032a7a5e51f38819afb

8/2(月)〜9/5(日) 水の波紋展2021 消えゆく風景から ー 新たなランドスケープ ◎岡本太郎記念館、山陽堂書店、渋谷区役所 第二美竹分庁舎、テマエ、ののあおやまとその周辺、梅窓院、ワタリウム美術館とその周辺 http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202108/

8/3(火) トークライブ「ニイマリコの結討広場」(『キャラクターとの付き合い方 ~How To Live With A Character~』 デュエリスト: カナイフユキ) ◎オンライン https://twitter.com/ninmari

8/3(火)〜 映画『祈りのもとで: 脱同性愛運動がもたらしたもの』(原題:Pray Away) ◎Netflix https://www.netflix.com/jp/title/81040370

8/4(水)〜 映画『BLACKPINK THE MOVIE』 ◎全国ロードショー https://blackpink-movie.jp/

8/7(土)〜 映画『オキナワ サントス』 ◎シアター・イメージーフォーラムほか全国順次公開 https://okinawa-santos.jp/

8/9(月・祝) Pride Book Shop(lonliness books、Over magazine) ◎Tac's Knot https://qpptokyo.com/news/61080364a92a786b61b597b1

8/17(火)〜 ドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』 ◎Amazon Prime Video 「スターチャンネル EX DRAMA & CLASSICS」 http://bit.ly/3wcpcqh

8/20(金)〜 ドラマ『ザ・チェア ~私は学科長~』(サンドラ・オー主演) ◎Netflix https://www.netflix.com/jp/title/81206259

8/20(金)〜 映画『Summer of 85』(フランソワ・オゾン新作) ◎全国公開  https://summer85.jp/

8/20(金)〜 映画『リル・バック ストリートから世界へ』  ◎ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺他全国順次公開 http://moviola.jp/LILBUCK/

8/21(土)~8/27(金) 映画『マジック・ランタン・サイクル』『ロスト ロスト ロスト』 ◎早稲田松竹 http://wasedashochiku.co.jp/archives/schedule/12098

8/22(日)~8/24(火) シモーヌ深雪フェスティバル  ◎プティモア、オンライン  https://petitmoa.jp/schedule2/

8/27(金)〜 映画『愛のくだらない』 ◎テアトル新宿 http://kudaranai-movie.com

8/27(金)〜 映画『オールド』(M.ナイト・シャマラン新作) ◎全国公開 https://old-movie.jp/

8/27(金) オーシャン・ヴオン本「地上で僕らはつかの間きらめく」(新潮社)発売 https://www.shinchosha.co.jp/book/590173/

8/29(日) 上映会「望月優子と左幸子—女優監督のまなざし」(「日本映画における女性パイオニア」プロジェクト) ◎国立映画アーカイブ https://twitter.com/women_pioneers

? 映画『Rocks/ロックス』 ◎APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA(オンライン) https://www.bunkamura.co.jp/cinema/apartment/

『Summer of 85』©2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES

『Summer of 85』©2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES

その頃、インターネットでは...

・“Who the Bær”ヴァーチャル版(Fondazione Prada|サイモンフジワラ)  https://who.fondazioneprada.org/

・彼の髪の色(短編映画|ノーマルスクリーン )  http://normalscreen.org/blog/colour  ★

・あの頃、ソウルで出会ったあの映画、あの人。(エッセイ|ノーマルスクリーン ) http://normalscreen.org/blog/yusuke  ★

・『滝沢歌舞伎ZERO2020 The Movie』 (松竹|Netflix配信開始) https://movies.shochiku.co.jp/takizawakabuki-zero-movie/

・木下惠介、小津安二郎時代から続く、日本のクィア映画の歩み(久保豊インタビュー|Japanese Film Festival Plus) https://jff.jpf.go.jp/ja/read/interview/queerfilms/

・19のいのち(NHK|相模原市の障害者殺傷事件に関する映像など多数) https://www.nhk.or.jp/d-navi/19inochi/

・コロナ禍の五輪開催を考えるVol.4 置き去りにされた多様性 #Tokyo2020 (Choose Life Project) https://www.youtube.com/watch?v=frl8PsrsIKI

Taro Masushio | RUMOR HAS IT

増塩太朗
Rumor Has It


Courtesy of the artist and Empty Gallery|無断転載禁止

展示風景(Empty Gallery|2020年12月|香港)
▶︎ https://emptygallery.com/exhibitions/eg20/

映像作品 公開期間:2021年6月14〜6月21日

こちらの映像作品をご覧になりたい方は、
下のリンク先より登録をしてパスワードを受け取ってください。
https://rumor.peatix.com/

Taro Masushio, Untitled 27, 2020 HD video, 25分42秒
増塩は日本で得たヴィンテージのホモエロチカのフィルムを自身のスタジオで投影し、それを撮影。この映像は、暗い部屋で鑑賞するとより堪能できる。

Taro Masushio, Untitled 28, 2020 HD video, 14分41秒
“大阪のおっちゃん”の生きた街を増塩が訪れ撮影した作品。ナレーションは、薔薇族の編集者、藤田竜が1971年に書いた2つの文章をもとにしている。旅の記録のようでもあるこの映像は、円谷が住んでいたかもしれない部屋をうつし彼の面影を探すようでもある。

 
 

Empty Gallery(香港)によるテキスト全訳:

Empty Galleryでは、ニューヨーク在住のアーティスト、増塩太朗初の個展「Rumor Has It」を開催します。増塩のコンセプチュアルな制作活動は、散文、ビデオ、ドローイング、彫刻を含み、それらの関係性の中で写真を命題を提案するものや思索的な装置として位置づけています。彼は写真媒体を現実の記録として使用するのではなく、イメージの許容性を調査し、私たち自身の知覚を操作することで、それを無限に拡張します。つまり、多元的な可能性を内包した世界の追求のために、時間、空間そして感情の領域を変幻自在に彫刻することで、それらを作品において機能させると言えます。

「Rumor Has It」を構成する作品群は、増塩が埼玉のマンションの一室に保管されていた特異なホモエロチカのアーカイブと運命的に出会ったことに端を発しています。そこは貴重なネガフィルムやファイルの宝庫であり、名も無き少年たちが集う虚ろな欲望の貯蔵庫でした。それに魅了された増塩は、レンズの後ろにいた円谷という人物を発見します。本展は、「大阪のおっちゃん」として知られる円谷順一(1916-1971)の長い間、謎に包まれていた事柄を中心に、写真、ビデオ、そして一つのモノリス状の彫刻で構成されています。円谷は、父であり、夫であり、写真ラボの技術者であり、その他にも様々な顔を持っていましたが、日本でホモエロティックな写真を撮影した初期の写真家の一人でした。彼はフットワークの軽い写真家で、衝動に駆られて2000人もの男性の裸体を撮影し、個人的な欲望のアトラスを作成した人物なのです。増塩は、今は歴史となったこの人物の謎を解き明かそうとするのではなく、彼の人生と仕事を儀式的になぞる(あるいは繰り返す)ことで、ある可能性という円谷の亡霊を出現させます。そしてそれは、彼自身の身体という変化し続ける媒体を通して行われます。

この方法は増塩の、円谷のアーカイヴ写真を再撮影した写真を一枚ごとに詳細に黒鉛でなぞり、一連にドローイング化するというシリーズに顕著に見られるます。この濃密な(再)創造の行為によって、写真のネガだけでなく、遠い過去に円谷の網膜の表面(つまり円谷の細胞の化学反応の中)に刻まれた反射光が、増塩自身の神経系や筋繊維を通り、温度や組成の変化していく様子が想像されます。原画に対するある種の中立性とリアリズムへの忠実さへの徹底したこだわりは、二人の“俳優”の間にある埋めようのない空間、つまり思考によってのみクリアできる溝という、本質的な乖離を浮き彫りにしています。このようにして生まれた作品は、絶妙なパリンプセストであり、時間を超えたハイブリッドで重なり合う存在から発せられるものなのです。エンヤ-マスシオ/マスシオ-エンヤ、のように。

この二重化のプロセスは、本展の他の作品にも見ることができます。一連の静物画は、現実と想像の両方で、はかないものや出合いのあったものを記録しています。あるものは、増塩が円谷のいた街を“巡礼”して集めたもので、半ば記憶に頼った逸話や住所を携えて、かつて円谷が住んでいた空間に自分の存在を重ねようとしたものです。一方、あるものは、生のほんの一瞬を占めていたかもしれないと想起させる家庭内の小道具で、純粋なフィクションと言えます。文脈を排除されたこのような粗末でありふれたも日用品は、本展で最も過激に露出した、つまりエロティックなイメージの一部です。安価な石鹸、サッポロビールの空き瓶、ボールの中の玉子ガニなど... 一見シンプルでどこでも買えるようなものには、潜在的な意味の集合が隠されています。それらは、円谷が過ごした昭和の物質的文化のフィクショナルな記録であると同時に、写真という媒体に対する内在的な視線による解釈であり、淫靡な内輪ネタのようでもあります。形象化を避けながらも、不在の身体のリズム、強迫観念、必然性へのある種の接近や親近感を暗示しています。

もうひとつのシリーズは、朝顔を描いたものです。“朝顔を育てる”ということは、日本の小学生にある種の国民性や美徳を教える道具としても使われています。増塩の他の静物画と同様に、被写体の文化的な普遍性や一見したところの白々しさは、他の潜在的な意味のカモフラージュとして機能しています。朝顔は日中に開花し、夜になるとしっかりとつぼみを閉じますが、増塩はこの花のサイクルの後半を撮影していて、我々にこれらの閉じた花の内部に発生する目に見えない運動を仮想・先見させ、閉じた個体それぞれが能動性を持つポテンシャルとして形成されます。この密閉された蕾(つぼみ)は、社会的な役割を果たすために体現された時間という考えと、同時に、私的な世界の維持という考えの両方、そして、円谷自身だけでなく、リビドーの経済的な流れと存在様式全体を示唆しています。この花をこっそり覗き込み、その夜の微細な動きを注意深く捉えることで、増塩は存在と不在、隠すことと明かすこと、表現と解除というふしだらな弁証法へと目を向け、視線やしぐさや見方といった単純なものによって、宇宙の発端が至る所に隠されていることを我々に気づかせるのです。

Empty Gallery | 2020年12月23日〜  2021年3月20日

Taro Masushio
増塩太朗はニューヨーク在住の作家。カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)にて学士号を、ニューヨーク大学で修士号を取得、カーラ・ブルーニ・サルコジ財団より奨学金を受け、パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学で1年間を過ごす。現在、UCバークレーで講師を務める。増塩の制作は肉体的な性や性行為などの経験や歴史・個人史を素材として媒介する傍で、アートにおいての突飛であり直感的な物理世界の創造、つまり時間や空間の在り方とその意識の可能性を提示する。近年はEmpty Gallery(香港)、 47 Canal(ニューヨーク)、 Capsule Shanghaiなどで展示。また執筆も行なっておりArtforumやArtAsiaPacificに寄稿している。

 
 

\ 作品公開記念トーク /

増塩太朗(作家) x 潟見陽(loneliness books

2021年6月18日 午後10時より生配信

*配信URLおよび記録映像は、下記Peatixページ(映像パスワード所得のページと同じ)で登録された方にお送りします。
https://rumor.peatix.com/

研究や調査のために、トークの映像を観たい方は、normalscreen @ g mail . com まで連絡ください。

・このページは、香港のEmpty Galleryで2020年12月23日〜2021年3月20日に行われた展示をノーマルスクリーン(本ページ)で公開のために作家が特別に再構成したものです。
イベントページはこちら:http://normalscreen.org/events/rumorhasit


主催:ノーマルスクリーン
協力:Empty Gallery
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

 
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ノーマルの気になる催し物リスト2021年7月

July 2021
Normal’s List

気になるイベントや映画上映情報などを勝手にピックアップ!

~ 9/26(日) アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人 ◎森美術館 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/anotherenergy/

〜8/29(日) 「イサム・ノグチ 発見の道」展 ◎東京都美術館 https://isamunoguchi.exhibit.jp/

〜8月15日(日) 田辺知美 『OWAN』(川口隆夫ディレクション企画 「舞踏 ある視点」) http://www.tokyorealunderground.net/program/0619.html

〜8月29日 佐藤雅晴 作品展「Handsーもうひとつの視点から」 ◎六本木蔦屋書店2F BOOK GALLERY https://store.tsite.jp/roppongi/event/art/20326-1621420529.html

〜7/11(日) 酒井・英・レイシュア個展「Feafully and wonderfully made 恐ろしく、素晴らしく」 ◎PQ's https://www.instagram.com/p/CQQ5ob5MQQA/

7/1(木)〜 映画『スーパーノヴァ』(コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ主演) ◎TOHOシネマズ シャンテ他にて https://gaga.ne.jp/supernova/

7/2(金) 〜 映画『デュー あの時の君とボク』 ◎シネマート新宿ほか http://www.hark3.com/dew/

7/2(金)〜7/15(木) 映画『Billie ビリー』(ビリー・ホリデイ ドキュメンタリー|音楽映画祭「Peter Barakan’s Music Film Festival」) ◎⾓川シネマ有楽町 https://pbmff.jp/

7/3(土) フェミニズム×トランスジェンダー 第1回「トランスジェンダー差別に抗して:インターセクショナリティとフェミニズム」(立命館大学国際言語文化研究所ジェンダー研究会) ◎オンライン http://www.ritsumei.ac.jp/research/iilcs/event/

7/4(日) トークイベント「タイBLからまなぶタイ語」 ◎オンライン http://pundit.jp/events/5443/

7/4(日) NOT ALONE CAFE(ゲスト: ガブ/ラビアナ) ◎オンライン https://twitter.com/notalonecafe

7/6(火)〜7/17(土) カンヌ特別版 マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(ユニフランス) ◎オンライン https://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/

7/7(水)〜 「DREAMS COME TRUE Prime Video Show」配信 ◎オンライン https://www.amazon.co.jp/dp/B095SX8PT8

7/9(金)〜 映画『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』 ◎全国公開 http://shinyshrimps.jp/

7/10(土)〜 映画『片袖の魚』 ◎新宿 K's cinema https://redfish.jp/

7/10(土)〜 映画『東京クルド』 ◎シアター・イメージーフォーラム、第七藝術劇場 https://tokyokurds.jp/

7/10(土) 菅野優香x斉藤綾子「フェミニズム&クィア映画批評入門」(『シモーヌ VOL.4』刊行記念|現代書館) ◎オンラインhttps://gendaishokanshop.stores.jp/

7/10(土)〜7/16(金) アニエス・ヴァルダ監督特集 ◎早稲田松竹 http://wasedashochiku.co.jp/archives/schedule/11354

7/13(火) LOVERS 61 Teiji Lovers Birthday Bash ◎Club METRO、配信 https://www.metro.ne.jp/schedule/210713/

7/16(金)〜 映画『SEOBOK/ソボク』(コン・ユ×パク・ボゴムのSF「徐福」) ◎新宿バルト9ほか https://seobok.jp/

7/16(金)〜 映画『17歳の瞳に映る世界』 ◎TOHOシネマズ シャンテほか https://17hitomi-movie.jp/

7/16(金)〜22日(木・祝) 第29回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~ ◎シネマート新宿 https://rainbowreeltokyo.com/

7/16(金)〜7/29(木) 『QUEER×APAC 2021 ~アジア・太平洋短編集~』オンライン上映(第29回レインボー・リール東京) ◎オンライン https://teket.jp/1045/5321

7/16(金)~7/21(水) MALE ART 2021 男のフェチズム展 ◎新宿眼科画廊 https://www.gankagarou.com/show-item/202107maleart/

7/17(土)〜 映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(インド、牛追いワイルドスピード映画) ◎シアター・イメージフォーラム他にて http://www.imageforum.co.jp/jallikattu/

7/17(土)〜8/1(日) 映画特集 カンヌ国際映画祭とフランスの女性監督たち(アンスティチュ・フランセ横浜) ◎横浜シネマリン https://www.institutfrancais.jp/yokohama/agenda/cannes/

7/17(土)〜 「アート×コミュニケーション=キース・へリング」展 ◎札幌芸術の森美術館 https://www.hbc.co.jp/event/keithharing/

718 & 7/23 映画『ガールフッド』 (カンヌ国際映画祭とフランスの女性監督たち|アンスティチュ・フランセ横浜)  ◎横浜シネマリン https://www.institutfrancais.jp/yokohama/agenda/sciamma/

7/19 & 7/22 映画『ルチャ・リブレの女王 カサンドロ』 (カンヌ国際映画祭とフランスの女性監督たち|アンスティチュ・フランセ横浜) ◎横浜シネマリン https://www.institutfrancais.jp/yokohama/agenda/losier/

7/20(火) トーク「自分と他人を理解するためのアイデンティティと表現について」(野中モモ、ゆっきゅん|『イラストで学ぶジェンダーのはなし』(フィルムアート社)刊行記念|JUNKUDO IKEBUKURO ONLINE) ◎オンライン https://honto.jp/store/news/detail_041000053960.html

7/21〜9/26 グループ展「one's signal」(開廊8年目記念) ◎KEN NAKAHASHI https://kennakahashi.net/

7/21(水) 『愛と法』上映&トーク (戸田ひかる、和田華子) ◎豊岡映画センター https://twitter.com/Toyooka_eiga

7/23(金・祝)〜29日(木) 第29回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~  ◎シネマート心斎橋 https://rainbowreeltokyo.com/

7/24(土) ~トランスジェンダーのリアル~ 『I Am Here ─私たちはともに生きている─』上映(第106回 VIDEO ACT! 上映会) ◎東京ボランティア・市民活動センター http://videoact.seesaa.net/article/481497372.html

7/24(土) ソウルと東京の小さな出版社と本屋さん(6699pressイ・ジェヨン、ブックギャラリーポポタム大林えり子|あんにょんパンド) ◎オンライン https://www.kokuchpro.com/event/1949559ede28075f8f782595933ee6cf/

7/30(金)〜 映画『イン・ザ・ハイツ』https://wwws.warnerbros.co.jp/intheheights-movie.jp

7/30(金) 映画『ハメルンの笛吹き』Blu-ray発売(ジャック・ドゥミ) http://www.ivc-tokyo.co.jp/titles/ha/a0539.html

7/30(金)〜 映画『返校』 ◎TOHOシネマズシャンテほか 全国 https://henko-movie.com/

7/31(土)〜 映画『日常対話』 ◎ポレポレ東中野 https://www.smalltalktw.jp/

彼の髪の色

彼の髪の色

その頃、インターネットでは...

・"LIFE WITH VIRUS": Teiji Furuhashi in New York トーク(ブブ・ド・ラ・マドレーヌさん|山中透さん|バーバラ・ロンドン)日本語/英語字幕付き https://vimeo.com/544090935  ★

・ぷれいす東京2020年度活動報告&トーク https://youtube.com/watch?v=I-0OYNpYwPk

・「キース・ヘリング〜ストリート・アート・ボーイ〜」 (ドキュメンタリー|配信|MadeGood)https://www.madegood.com/keith-haring-street-art-boy/

・Spotify Japan #PRIDE プレイリスト (監修:木津毅) https://twitter.com/tsuyoshi_kizu/status/1399674612661637122

・It's just our family /私たちの家族(ドキュメンタリー|30分) https://youtu.be/7_1jQ4Avw_8

・公開フォーラム「想像力という<資本>」映像配信https://alternative-kyoto.jp/news/275/

・ドラマ『ヴィダ 故郷の母が遺したもの』on STARZPLAY (Apple TV, Amazonプライムビデオ) https://youtu.be/k0Ha20Njsf0

・彼の髪の色(短編映画) http://normalscreen.org/blog/colour  ★

・『レズビアン歴史アーカイブ』を通して、改めて考える「アーカイブ」とは?(「ニューヨークのレズビアンアーカイヴ探究!」イベントレポート) http://normalscreen.org/blog/lha-report  ★

NYの『レズビアン歴史アーカイブ』を通して、改めて考える「アーカイブ」とは?

自分たちで残していかないとどんどん失われてしまうのが、マイノリティの歴史的な史料。
ただ、アーカイブを残さなければと思っても、想像するだけでも途方もない作業量に圧倒されて、呆然としてしまうこともある。
2月13日に開催されたオンラインイベント「ニューヨークのレズビアンアーカイヴ探究!」は、米ニューヨークの『レズビアン ハストリー アーカイブ』を取り上げた短編ドキュメンタリー2本をもとに、同志社大学准教授の菅野優香さんと写真家の間部百合さんと一緒に話し合う機会となった。
今回は、そのイベントの模様をレポートしつつ、「アーカイブとは何か?」について改めて考えたい。

アーカイブで周縁化されがちなマイノリティ

「アーカイブ」という言葉から、どんなものを思い浮かべるだろうか。
きっちりと棚に整理されたたくさんの資料や、カテゴリーごとに分類されたデジタルコンテンツとか?
教科書に載るような、あるいは図書館に集められるような歴史的な史料とか?
辞書によると、アーカイブとは「公文書。古文書。また特に公共性が高く、のちに歴史的重要性をもち得る記録や資料を、まとめて保存・管理する施設や機関および事業のこと」(デジタル大辞泉)となっている。

アーカイブを作る場合、どんなものを集めるかや、その中でも何を重要とするか、それらをどう分類するかといった点に、作る側の思想や意図が入り込むことは避けられない。
アーカイブを作るのは、たいてい主流派、権力のある側だ。
その結果、作る側に選ばれたものが重要とされ、その他のものは必然的に周縁化されてしまう。

2月13日に開催されたオンラインイベント「ニューヨークのレズビアンアーカイヴ探究!」は、LGBTQのアーカイブについて考える特集の一つとして企画されたもの。
ここで取り上げられたのは、レズビアンに関する最古で最大のアーカイブと言われている、ニューヨークの『レズビアン ハストリー アーカイブ(Lesbian Herstory Archives)』。
ちなみに、Herstoryとは「ヒストリー(His story=男の歴史)」から「ハストリー(Her story=女の歴史)」へ、という言葉遊びから付けられたそう。

今回のイベントの参加者には事前に、メガン・ロスマン監督による短編ドキュメンタリー『レズビアン ハストリー アーカイブ:その歩みを振り返る』と『ラブレター レスキュー隊』(いずれも2016年)がシェアされていた。
そして、イベントの前半は、2018~2019年にニューヨークに滞在し、LHAを何度も訪れ調査したという、映像が専門の同志社大学准教授、菅野優香さんによるレクチャーからスタート。

アパートの1室に収集することから始まった

LHAは1973年に、ニューヨーク市立大学に関係する人たちが作った『ゲイ・アカデミック・ユニオン』を脱退したレズビアンたちによって始まったという。
最初の1~2年は集まってただ話をしていたが、そのうちに「自分たちのコレクションを始めよう。手始めに、今あるものを1カ所に集めよう」ということに。
初めは、なんとメンバーが住むアパートの1室(キッチン裏の空き部屋)に資料を集め、ニューズレターを発行するところから始めたのだそう。
「アーカイブ」というと、つい「スペースは? 家賃は?」などと現実的な問題を考えてしまいがちだが、形から入ろうとするのではなく、「できることから始める」ことの大切さを痛感させられる。

やがて、アパートの他の部屋もアーカイブの史料で侵食され始めて、アーカイブ専用の家を探すことに。
コミュニティからの寄付で建物を購入し、ニューヨークのアッパーウエストから、1992年にブルックリンに移転して、それから30年経った現在もまだ同じ場所で続いている。

LHAの組織や空間の特徴の一つとして、公的なサポートを受けず、ボランティア運営していることがある。
「国や自治体の補助を受けると、さまざまな規制や政治的な影響を受けてしまうというリスクがあるからです。
現在は、最低5~20人のボランティアが常にいて、仕事をしています。
同じ理由で、商業主義には与せず、ゲイプライドには参加しないのだそうです」
と菅野さん。

また、「アーカイブ」と言っても、史料目的の人だけでなく、誰が来ても歓迎するコミュニティスペースとしても運営されている。
空間自体が居心地のよさを意識して作られており、朗読会などのイベントも行われているそう。
映像の中にも、本好きの友達の家に来たかのような、アットホームな室内のようすが映し出されていた。


寄贈はすべて受け入れる包括的なアーカイブ

さらに特徴的なのが、そのアーカイブの内容や方法だ。
具体的にどんなものが集められているかと言うと、未出版論文、短編小説、詩、書籍、定期刊行物、アート、スライド、写真、グラフィック、音声・映像テープ、横断幕、楽譜、バッジ、衣服、原稿、日記、手紙などなど。
大学の図書館では扱われないような、バーの歴史や、1950~60年代の「レズビアン・パルプ」と呼ばれる大衆向けの安価な雑誌、ラブレターや恋人との写真などもある。
驚くのが、寄贈されたものはすべて無条件に受け入れていること。
そこには、「何を入れて、何を入れないかを取捨選択しない」という明確な意図がある。
スペース的な問題や、分類作業を考えても、これは簡単なことではない。


「彼女たちは『バージニア・ウルフとレズビアン・パルプの作家、どちらが偉いということは全然ない』という態度。
ロールモデルは作らず、どんな人も等しく重要なものとして扱っているんです。
工場労働者やブッチ・フェム・コミュニティ、セックスワーカー、セックスパフォーマーの生活に関する記録なども積極的に集めていましたね」
と菅野さんは話す。
映像の中でも、
「『ナチのレズビアンのものでも受け入れるか?』と聞かれたら、YESと答える。
そうしないと、歴史を文字通り“ホワイトウォッシュ”することになってしまうから」
と、創設メンバーの一人であるデボラ・エデルさんが答えていた。

アーカイブすることは歴史を取り戻す運動

自分たちが歴史の中で周縁化されてきたからこそ、誰も排除せず等しく扱う。
この「整理されていなさ」こそが、彼女たちのラディカルさなのだ。
「アーカイブをすることは、街頭でのデモにも等しいアクティビズムです」とデボラさんは映像の中で話している。
「アーカイブは、コミュニティが自らの歴史を取り戻す運動なのです」

また、分類システムも独自のものを作っている。
例えば、家父長的な分類法である苗字ではなく名前で分類する、史料に序列をつけない、レズビアン自身が管理する、など。
ここにも、権力の影響は受けない、誰のことも排除しないという徹底した姿勢がうかがえる。

その一方で、プライバシーの問題があるのも事実だ。
史料の持ち込みの際には、本人に一筆書いてもらうシステムになっているようだが、本人が亡くなった後、家族たちから「破棄してくれ」と言われることも。
その場合も、本人の意思を最優先とし、家族を粘り強く説得するのだそう。
本人からも家族からも、証拠隠滅として廃棄されがちな史料だからこその苦労も、計り知れない。

できる人ができることから始めることが大事

イベント当日は、Zoomのチャット機能を通じて、「日本では何ができるだろう?」という話が出た。
「コミュニティのアーカイブとして、信頼できるものがあれば、寄贈したいという人はいるのではないか」
「高齢になって施設に入るときに始末してしまう当事者がいるかもしれないと思うと、早急に作る必要があるのでは?」
「やりとりがデジタル化していく中で、今後どうやって保存していくのがいいか」
「今は『レズビアン』と名乗る人が減っているが、アーカイブの対象をどこで区切るのがいいか」
「障がいのある人のものをどう集めるか。障がい者のアクセシビリティの問題をどう解決するか」
などなど、さまざまな角度からのコメントが飛び交った。
また、参加者それぞれがアーカイブしているものの話も刺激的だった。

Manuscripts and Archives Division, The New York Public Library. "Miscellaneous political buttons" The New York Public Library Digital Collections. 1960 - 1989.

Manuscripts and Archives Division, The New York Public Library. "Miscellaneous political buttons" The New York Public Library Digital Collections. 1960 - 1989.

 

「サンフランシスコのLGBTアーカイブは、北カリフォルニアの人からの寄贈だけを受け付けるという区切りを持っているそうです。
というのも、他にも地域ごとのアーカイブがあって、それぞれネットワークを持っていて、例えば雑誌の何号とか抜けているものを補い合ったりしているそうで、それっていいなと思いました」
と、ノーマルスクリーンの祥さんが言うと、
「いろんなところで同時多発的にたくさんやるのがいい。1カ所に集めると、災害とかがあったら全部ダメになってしまうし。リスクを分散していろんなところでやるのがいいですよね」
と菅野さん。

アーカイブを作ることの難しさはいろいろある。
その一方で、とにかく始めないと、史料がどんどん失われていってしまうのも事実。
物を集約しようすると大変だが、まずは誰が何を持っているのかのリストを作るとか、とりあえずアーカイブの連絡先があるだけでもいいのかもしれない。
こうして、みんなで話をしているだけでも、アーカイブの夢は広がっていく。
クリエイティブなマインドを持って、楽しみながらアーカイブについて考え、作っていこう。
そんなふうに思わせてくれた、刺激的な時間だった。

TEXT: SAYA YAMAGA

イベント概要:http://normalscreen.org/events/lha


↑ イベント当日の様子(2021/2/13)
配信のために東京では、黒鳥福祉センターに場所の提供をいただきました。ありがとうございました!


・編集のミスで、本文の一部がぬけていました。お詫びいたします。(2021年7月10日午前 修正)
ぬけていたのは、「菅野優香さんによるレクチャーからスタート。」と「やがて、アパートの他の〜」の間の「アパートの1室に収集することから始まった」の箇所です。

あの頃、ソウルで出会ったあの映画、あの人。

クィアの人々にとっての歴史を考えるきっかけをくれる映画を紹介してきましたが、ここでは、本企画のために韓国文化や歴史に詳しい植田祐介さんに書いてもらった文章を公開します。ある日本出身のゲイ男性の個人的な視点から、過去20〜30年ほどの韓国のLGBTQ事情を想像させてくれる体験をシェアしてもらいました。韓国と日本を行き来しながら変化していった、筆者と韓国の様子を想像してみてください。


 

タブーの映画を上映する、韓国の「地下上映」

90年代の韓国は地下だらけだった。いざというときに防空壕の役割を果たすという地下道(朝鮮戦争はあくまでも休戦状態で、今に至るまで準戦時下にある)、市場よりはオシャレだけどデパートほどでもないそこそこの服で溢れる地下街、深夜営業禁止令をガン無視してヤミ営業をし、警察官の集団の来襲に、裏から路地へとつながるにじり口から出されたゲイクラブも地下にあった。

イケメンとまぐわっていた最中に警察官がやって来て、室内を一瞥した後、オーナーと何らかのやり取り(おそらくワイロ)をして出ていく一部始終を、喘ぎながらぼんやりと見ていたのも、最高級のホテル新羅(シルラ)のそばにあった、ボロ屋の地下のハッテン場だった。

そして、韓国であの時代を過ごした人なら一度は体験したであろう地下上映だ。

とは言っても、今は亡きあべの文化劇場(大阪市の阿倍野共同ビルの地下にあり、東映系の映画を上映していた映画館。ローカルすぎてすいません)のように文字通り地下にあった訳ではない。政府が見せてはならないとする映像を密かに見せてくれるイベントのようなもので、大学のキャンパス周辺に貼られた貼り紙や友人からの口コミ、そして最盛期だったパソコン通信ででその存在を知った。

映画『1987、ある闘いの真実』には、キム・テリ扮するヒロインのヨニが、カン・ドンウォン扮するイ・ハンニョルから映画の上映会に誘われ、何の気なしに見に行ったら、軍事政権下のメディアでは報道できなかった、1980年光州民主化運動の真実に関するビデオだったというシーンが登場する。が、民主化後しばらく経った90年代中盤以降の韓国では、そんな「ガチのタブー」ではなく、もはや有名無実化した「建前のタブー」を上映する場所だった。

最も一般的だったのは、日本の映画、特にアニメだったように覚えている。テレビでは韓国語に吹き替えられ、登場人物の名前も地名も韓国風に変えられた上で放送されていたものの、日本のアニメ映画の放送、上映は90年代の最末期まで禁止され続けていた。そんな中で、生の日本のアニメに接することができたのが地下上映だった。実は『となりのトトロ』を初めてみたのは、ソウルの学生街シンチョンの外れにある、地下のカフェでのことだ。

抗議の末、上映された不完全な『ブエノスアイレス』

当時、カルト的な人気を集めたのは、日本のアニメではない。ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』だ。1997年の朝鮮日報にこのような記事がある。


『ブエノスアイレス』公倫’輸入不可’判定
朝鮮日報1997年7月17日

ウォン・カーウァイ監督の新作『ブエノスアイレス』が公演倫理委員会の輸入審議で、不合格判定を受け国内でのロードショーが困難になった。(中略)公倫は再審結果を通報し、不合格理由を「同性愛がテーマでわが国の情緒(国民感情)に反する」と明らかにした。しかし『プリースト』『クライング・ゲーム』『ウェディング・バンケット』など、同性愛を

扱った映画が既に上映されており、審議義務原則性をめぐり、映画関係者は批判の声を高めている。(以下略)

韓国国内はもちろん、ウォン・カーウァイ監督や主演のトニー・レオンからも抗議の声が上がり、同年9月の釜山国際映画祭で上映されることになったが、それに対しても異論が示され、メディア、映画関係者に限っての上映となった。映画館での上映にこぎつけたのは翌年8月。それも、オーラルセックスのシーンなど4分間を削除した上でのことだった。

僕は完全版を見るために、シンチョンで行われた地下上映の場所に向かった。だが、場所が文字通りの地下だったこと以外、何も思い出せない。ストーリーそのものより、見られたという事実に興奮しすぎたせいなのかもしれない。日本に一時帰国すればいくらでも見られるものだったが、LCCがなかった当時、今ほどは気軽に行き来できなかったのだ。

他にも数え切れないほどの映画を見ているはずなのだが、印象に残っているのは『明日に流れる川』だ。明桂南(ミョン・ゲナム)、楊喜京(ヤン・ヒギョン)など、今でも活躍する俳優が登場し、ロードショー上映されたものではあった。しかし、韓国では少しでも客が入らないと、すぐに上映をやめてしまうこともあり、僕が見たのは地下上映でだった。

「母を失ったジョンインは、(唯一血の繋がった妹の)ミョンヒとの関係を断ち、一人で広告代理店のビデオ監督として生きる。そんなある日、小説家の友人と共に好奇心から立ち寄ったゲイバーで、自動車のディーラーをしているスンゴルに出会う。ジョンインは家族を優先するスンゴルが不満だが、それでも二人の愛情は深まっていく。ジョンインはスンゴルが糖尿病で入院した間、寂しさから訪れたゲイバーで出会ったパン社長についていくも、スンゴルのいないことばかりが気になり、社長の家を飛び出す。それをきっかけにより親密になった二人は、チョン・ギモ(実母の再婚相手の第三夫人)の還暦祝いの場で、二人が恋人同士を告白する」(「韓国クィア映画史」より抜粋)

『明日に流れる川』場面写真

『明日に流れる川』場面写真

今回、この文章を書くに当たって、20年ぶりに映画を見直してみようと思ったのだが、残念ながら見つからない。複数の評から映画の大まかなストーリーを再構成してみると、朝鮮戦争で夫を失った母親が、別の男性と結婚するもうまくいかず、息子はベトナム戦争で戦死という、激動の近現代史を生きた韓国の家族を描いた前編、そしてゲイという言葉すら韓国に伝わっていなかったであろう時代を生きる“おっさんずラブ”を描いた後編という構成で、あまり1本の映画にまとめた意味が見いだせないものらしい。1997年の第6回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映されたそうなので、どこかで見られる機会があるはずなのだが、もしなければ自分で作りたいと考えている。

クィア映画が政府公認の企画へと変わった、この20年

『ブエノスアイレス』上映を巡る騒動から1年あまりが経った1998年11月、ソウル市内の民間のホール、アート・ソンジェ・センターで、第1回ソウルクィア映画祭が開かれることとなった。その代表を務めていた徐東辰(ソ・ドンジン)さんは、韓国の延世(ヨンセ)大学で韓国初となるゲイサークルCome Togetherを立ち上げたことで、大学院への入学を拒否され、大学講師として活躍していた。彼の学習会に参加したことをきっかけに、映画祭のお手伝いをすることになった。とは言っても、会場のセッティングなど雑用に過ぎないのだが。

アート・ソンジェ・センターのinstagramの公式アカウント

アート・ソンジェ・センターのinstagramの公式アカウント

 

実は前年に、延世大学のキャンパス内で開催が予定されていたのだが、大学当局の妨害で中止に追い込まれた。アート・ソンジェ・センターへと場所を変え、時間も変更した上で改めて開催することになったのだが、会場側は極めて非協力的だったことを記憶している。今では公式のInstagramでレインボーカラーのプロフィールを掲げているのを見ると、10数年の時の流れと変化を肌で感じる。同性愛を取り締まる側だった政府だが、今ではその外郭団体の韓国映像資料院が「隠されたクィア映画を探して:1996年以前の韓国クィア映画」という企画を立ち上げるほどだ。

時の流れと言えば、横浜の神奈川芸術劇場で開かれた国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2018(TPAM2018)のプログラムの一つとして、サイレン・チョン・ウニョンさんの「変則のファンタジー_日本版」の中で、僕が日本語字幕の翻訳を担当した映画『ウィークエンズ』の上映が行われたのだが、その観客の一人として来ていた徐東辰さんと10数年ぶりに再会したことも挙げておきたい。ソウルクィア映画祭立ち上げ当時は貧乏な講師だった彼が、有名な芸大の教授となっていた。

念願の平等法成立か、バックラッシュか

しかし、この10数年の権利獲得に向けた運動が順調だったとは言い難い。2000年9月に、韓国の芸能人として初めてカムアウトした洪錫天(ホン・ソクチョン)さんは、当時出演していた子ども番組から降ろされ、数年に渡って「干された」。同じ年には、当時最大のゲイとレズビアンのコミュニティサイトEXZONEが、情報通信倫理委員会から青少年有害媒体に指定されてしまったのだ。そればかりか「同性愛」が禁則キーワードとされてしまった。

韓国では、有害指定されたサイトはブロックされてしまい、当時一般的でなかったVPN(仮想回線)などを使わない限り、国内からはアクセスができなくなってしまう。この差別的な決定を覆すための裁判闘争が行われた。三権から独立した人権擁護機関、国家人権委員会は2003年、同性愛を青少年にとって有害とするのは性的指向に基づく差別だとして、一連の決定を取り消し、関連法の修正を勧告した。そして翌年、青少年保護法施行令は改正された。

2007年には、差別を包括的に禁止する差別禁止法制定の動きが起きた。しかし、保守派やキリスト教団体からの強い抵抗を受け、それらの票の逸走を恐れた議員たちが本腰を入れず、結局は廃案に追い込まれてしまった。そして2021年、8度目のチャレンジが行われている。

韓国国会の公式ウェブ署名サイト「国民同意請願」で、差別禁止法の制定を求める請願が立ち上がり、「30日以内に10万人の署名を集める」条件をクリアするために、大規模なキャンペーンが繰り広げられた。そして、6月14日に無事目標を達成し、請願書は国会の法制司法委員会に送られた。これを受けて、与党「共に民主党」の議員24人は、国会に平等に関する法律案を発議した。

法案は、障害、兵歴、出身国家、民族、人種、肌の色、出身地域、容貌、遺伝情報、婚姻、妊娠、出産、家族の形や状況、宗教、思想、政治的立場、前科、学歴、雇用形態、社会的身分、そして、性的指向とジェンダー・アイデンティに基づく差別を禁止するというものだ。

次期大統領候補と目される人々も次々に前向きな姿勢を示しており、多くの人々の10数年来の念願がようやく叶うかもしれない。しかし、反対派の抵抗は強く、平等法の制定が挫折させられるばかりか、保守政権が誕生すれば、強力なバッシュラッシュが来襲し、「地下」に潜っていたあの時代への回帰を強いられるかもしれない状況が同時に存在しているのが、今の韓国だ。

映画をめぐる攻防を含めた30年近い、LGBTムーブメントに関する様々な資料は、Korea Queer Archiveというアーカイブに保存されている。公式サイトによると、アーカイブの構築を目的に2002年に設立された韓国性的少数者文化人権センターを母体にし、資料収集を行い、2009年に正式に発足した。通常は閉架で運営されているが、2019年10月に行われたイベントでは所蔵された資料の1割に当たる約8000点が展示された。その関連イベントでは、いかなる資料が存在するのかは、アーカイブに関わる人ですらすべて把握してきれていないと話していた。ムーブメント以前の歴史に焦点を当てたオーラルヒストリーの収集も行われているそうだ。

助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

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彼の髪の色


歴史や記憶や保存について考える作品や活動を見つめるノーマルスクリーンの特集 ▶︎ 

2017年に欧米を中心に世界の映画祭で上映されたイギリスの短編映画『彼の髪の色』を日本語字幕つきで公開します。

舞台は、1960年代中頃のイギリス。男性間の親密な関係が違法(1885年から続いた)であった時代のゲイカップルが登場し、そこにアーカイヴ資料が織り込まれます。浮かび上がるのは、当時のゲイ男性らが人知れず苦しんだ時間。法改正により同性愛が脱犯罪化されて50年後の2017年、それを祝い様々な作品や催しがイギリスで行われ、本作も発表されました。本作では、映像化されず幻となっていた脚本「彼の髪の色」をもとにした劇映画とアーカイブ化されているニュース映像や個人的な記録などが織り込まれています。冒頭で言及される1954年の「モンタギュー事件」とは、モンタギュー卿が男性に性行為を扇動したとして逮捕され有罪判決を受けたことを指します。これをきっかけにイギリス市民は、この法律に異議を表明し始め、政府は調査委員会を設置しました。

『彼の髪の色』の劇映画部分には、本作制作時は英国テレビや小さな映画に出演する“インディー俳優”だったジョシュ・オコナー。彼は後に、出演作の『ゴッズ・オウン・カントリー』の成功により、ファッションブランド「ロエベ」の顔になり、Netflixドラマ『ザ・クラウン』では、チャールズ皇太子を演じゴールデングローブ賞を受賞しています。

 
 
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Director: Sam Ashby
Cast: Sean Hart, Josh O’Connor 
Camera: Jessica Sarah Rinland 
Music: Leslie Deere 
Sound: Joe Campbell 
Colourist: Chloe Thorne

可能であれば、カンパお願いします ♡
・Peatix - https://ns-donation.peatix.com/
・PayPal - https://paypal.me/normalscreen

・STORES - https://normalscreen.stores.jp/items/6121d86e2b2d3d7a58d47c13


 

字幕:
・画面右下【CC】をクリックして[日本語]を選択してください。
・説明付き字幕は[日本語 CC]を選択してください。

 

Sam Ashby
監督:サム・アシュビー:ロンドン拠点のアーティスト、デザイナー、ライター。アシュビーは、15年以上にわたりイギリスのインディー作品のポスターデザインを多く手がける。そのかたわら、2010年から自身で雑誌Little Joeを制作し出版(現在は休刊状態)。現在は映画ポスターなどのグラフィックデザインを続け、長編映画の準備をしている。

ゲイの弟の経験をもとにした脚本を発掘し、動き出したプロジェクト。

『彼の髪の色』が発表された2017年、イギリスでは、男性間の親密な関係を違法としていた、法律(いわゆるソドミー法)の撤廃から50周年でした。それを記念し、関連する数多くのテレビ番組や映画が製作され、展示などのイベントも多く行われていました。

その数年前、主に映画ポスターのグラフィックデザインや映画に関する執筆で活躍していたイギリス人のサム・アシュビーは、念願の映画制作をするため、リサーチを始めていました。クィア・ヒストリーに強い関心をもち、自身で雑誌「Little Joe」(刺激的なヴィジュアルと、主に欧米のクィアの歴史における映画を著名なアーティスト、作家、映画監督らがジェンダーやセクシュアリティの観点から語るインタビューやエッセイから構成されている)を出版するほどだったアシュビーは、ある時、ロンドンのthe Hall-Carpenter Archives で本作の元となるシナリオを発見し、それにフォーカスすることを決心します。

ブラックメールを送られ、困惑するゲイカップルが描かれ「彼の髪の色」と題されたそのシナリオは、1964年にエリザベス・モンタギュー(モンタギュー事件で裁判にかけられたモンタギュー卿の姉)により書かれたもの。しかし、映画の制作は実現していませんでした。それを発見したときのことをアシュビーは、米Criterionによるインタビューで次のように語っています。

「(シナリオは)歴史的な重みを備えた、非常にユニークなテキストでした。このシナリオで絶対に何かをしなくてはいけないと思わせる重さでした。この物語を敬意を持って語らなければならない、という責任感を伴うものでもありました。このスクリプトが当初意図していたことを尊重したかった。その意図とは、同性愛に対する世論をかえるための教育的な役割です。しかし同時に、アーカイヴとの出会いという私の経験とリサーチを通して浮かび上がった多くの疑問をもりこもうと試みました。」

本作では、ドキュメンタリー、ニュース、アーカイヴの映像やインタビュー音声などが折り込まれています。まず、ニュース映像に関しては、脱犯罪化50周年の特別上映プログラムにむけ大量にデジタル化されていた資料を英国映画協会(BFI)で確認。スーパー8のホームムービーは、レズビアン&ゲイ ニュースメディア・アーカイブ (LAGNA at ビショップスゲイト インスティテュート)で発見し、撮影者から許可をもらい使用しています。その他のLAGNAのアーカイヴは寄贈されたロンドン・スクール オブ エコノミクス(LSE)が全てを受け付けなかったために、ロンドン内3ヶ所(LSE、大英図書館、ビショップスゲイト インスティテュート)に分散してしまっているという残念な状況にアシュビーは気付いたそうです。

それら分散したアーカイヴを集め、イメージがたくみに編集された手法について、アシュビーは以下のように語っています。

「モンタギューが書いたナラティブとキャラクターを膨らませる代わりに、観る人がよりひろい視野でこの物語を理解できるように、当時のこの法律下での生活やアクティヴィズム、そして法の改正後に盛り上がったクィアカルチャーの状況がわかるようにしたかった。そしてアーカイヴのおかげでこのスクリプトに出会えたので、この物語を伝えるために他に何を見つけられるかを探るのも私にとって大切なことでした。その結果、オーラルヒストリーやアーカイヴ映像も含まれることになったのです。それぞれがその時間ならではのかたちで存在しているので、私が編集でつくりたかった“時間を旅しているような感覚”がそこにはあります。」

2017年のイギリスでは、LGBTQに関連する展覧会やラジオとテレビなどでも番組が大量に放送されました。なかでもBBCは、特別に編成するほどコンテンツを作成しました。その1つとして、モンタギュー卿とともに逮捕された一人でジャーナリストだったピーター・ワイルドブラッドの自伝「Against The Law」をもとにした映画も放送されました。劇映画と当時同様に苦しんだ経験のある年配のゲイの人々のインタビューで構成され、1967年以降も偏見やトラウマなどに悩まされた人々の声が紹介されます。しかし、そこにも汲み取られてない声があるでしょう。

『彼の髪の色』の終盤で、アーキビストがアーカイブと向き合う際に心がけるべきことを伝える通りです。「どんな場合も、ここにいないのは誰かを考えたい。アクセスできなかった声を認識し、必要な努力を知る必要がある。」



 
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*英国の性犯罪法は1967年にイングランドとウェールズで、21歳以上の男性同士の同性愛行為を合法化した。しかしスコットランドでは1980年、北アイルランドでは1982年になるまで、同性愛は違法だった。(BBC記事より抜粋:https://www.bbc.com/japanese/37713830)


関連情報/参考:

・インド最高裁、同性同士の性行為に合法判決(BBC|2018年9月)https://www.bbc.com/japanese/45431512

・同性愛で有罪となった故人数千人を赦免 英政府(BBC|2016年10月)https://www.bbc.com/japanese/37713830

・暗号解読者チューリングの新ポンド紙幣お披露目 6月から流通(AFPBB|2021年3月)https://www.afpbb.com/articles/-/3338826?pid=23194071 

・映画『ジュディ 虹の彼方に』(1968年のロンドンで5週間の滞在をしたジュディ・ガーランドの姿が描かれる)https://gaga.ne.jp/judy




日本語字幕、協力:西山敦子
主催:ノーマルスクリーン
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

 
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