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アグネス 〜過去から今へ〜


1950年代に実在したトランスの人々の記録書類と現在のアメリカのトランスのアーティストが繋がる19分の実験的ドキュメンタリー、日本語字幕つき配信!

申し込み:https://framingagnes.peatix.com/
会場:オンラインのみ
チケット:0〜600円
期間:2021年5月27日 (木) 〜 6月13日 (日)

 アグネス 〜過去から今へ〜
(Framing Agnes|監督:チェイス・ジョイント + クリステン・シルト|19分|2018年|英語)

1950年代後半、医療に意見を求めたアグネスというトランス女性がいた。その資料を近年発見した社会学者が映画監督と協働し、その過去を現在のトランスジェンダーのアーティストたちとともに再現とインタビューで蘇らせる。

アグネスを演じるのは、Amazonプライムのドラマ『トランスペアレント』のプロデューサーとしても注目されたアーティストのザッカリー・ドラッカー。他に、『POSE/ポーズ』でキャンディ役のアンジェリカ・ロス、映画やドラマの監督として活躍するサイラス・ハワードなどが出演し、1950年代の記録から連想されるトランスジェンダーとして生きる自身の経験を語っている。

監督は、チェイス・ジョイントとクリステン・シルト。現在映画監督のジョイントと社会学者のシルトは、2002年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で出会い、2014年に、シカゴ大学(Gray Center for Arts and Inquiry)のメロン基金によるフェローシップに2人で参加。そこでの調査からこの映画『アグネス 〜過去から今へ〜』は生まれた。現在は本作の長編版を製作中、そして2人はこの調査を基にトランスジェンダーアイデンティティについて言い伝えられてきた医学的専門性に異議を唱える本「Conceptualizing Agnes」を執筆中。

*ノーマルスクリーンは、歴史や記憶や保存について考える特集を継続して行なっています。
詳細:http://normalscreen.org/blog/rekishi1

鑑賞方法:

1)こちらのリンク先で登録/支払い:https://framingagnes.peatix.com/

2)Peatixの[マイチケット]→[イベントに参加]から鑑賞

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Director’s Statement – Chase Joynt

監督ステートメント:私の活動は、実験的でパフォーマティブな手法を用いて、トランスコミュニティに影響を与える文化形成に注力するという信念に基づいています。例えば、私の作品は、性別適合手術のナラティヴと癌の手術のナラティヴを並置したギャラリーでの展示「RESISTERECTOMY」から、私と正統派ユダヤ人の母との間の予期せぬ親子関係を探求した短編映画『AKIN』まで様々です。『アグネス〜過去から今へ〜』もこれらと同じ基盤から始まり広がっています。

性別を移行する人々やコミュニティを描いたドキュメンタリーの大半は、それ以前/以降という形式で説明されています。友人や家族からの話や過去の断片的な記憶が、“あの頃”と“今”の違いを視覚的に強調するために使われるのです。

ドキュメンタリー映画制作やトランスの人々の歴史を語る際に、集団についての物語ではなく、一人の人間の物語を伝える、というのがよくある手法です。例えば、1993年に起きたブランドン・ティーナの殺人事件は、キンバリー・ピアース監督の『ボーイズ・ドント・クライ』(1999年)で描かれ、今でもマスコミやハリウッドの注目を集める重要な出来事となっています。同様に、1950年代に、複数のトーク番組(当時黎明期だった)で行われたクリスティーン・ジョーゲンセンのインタビューは、トランスの人々におけるテレビ史の特筆すべき転機として今でも言及されています。

このようなストーリー/語りでは、トランスの人々は、コミュニティや家族から切り離された孤立した存在であり、それゆえに危害や搾取を受けやすい存在とされます。実際には、トランスコミュニティは「トランス」という言葉が登場し注目される前から、人知れず共になんとか生き、共に世界を構築してきました。“孤立”、それは、実際にはメディアによって作られ、コントロールされた語りであり、本作は、こうした使い古された手法や世間の期待するイメージに反発し、トランスヒストリーの新たな語りの可能性を切り開いています。

出演者 & 監督プロフィール:

ZACKARY DRUCKER
ザッカリー・ドラッカー:アーティスト。トランス女性としてジェンダー/セクシュアリティや“見ること”を分析/解体し作品を制作している。これまでに、ホイットニービエンナーレ2014に選ばれ、数多くの展示およびパフォーマンス(MoMA PS1など)を行なっており、2020年にはボルティモア美術館で写真展「Zackary Drucker: Icons」を開催。Amazonプライムのドラマ『トランスペアレント』では、プロデューサーとして参加した。
Instagram and Twitter.
・関連情報:リース・アーンストとザッカリー・ドラッカーの関係(ノーマルスクリーン) http://normalscreen.org/blog/relationship

ANGELICA ROSS
アンジェリカ・ロス:実業家、女優、トランスジェンダー権利を訴えるアドヴォケート。独学でコーディングを習得後、テク業界でトランスジェンダーの人々の雇用を支援するTransTech Social Enterprisesを設立。演技デビューは、ウェブシリーズ『HerStory』で、FXのドラマ『POSE/ポーズ』や『アメリカン・ホラー・ストーリー:1984』に出演している。2019年に行われたLGBTQ Presidential Forumでは、トランスジェンダーとして初めて司会を担った。
Instagram and Twitter
・関連情報:Black Trans Lives Matterと映画・ドラマ作品をめぐる10の視点(Wezzy) https://wezz-y.com/archives/78086/2

SILAS HOWARD
サイラス・ハワード:監督、脚本家、エグゼクティブ プロデューサー。境界線をこわし、誠実なストーリー作りを意識し監督した長編映画『ジェイクみたいな子』は、サンダンス映画祭や第28回レインボー・リール東京で上映された。これまでにエピソードの監督を務めたドラマは『トランスペアレント』『POSE/ポーズ』『メリー・アン・シングルトンの物語』『フォスター家の事情』など数多い。
Instagram and Twitter

MAX WOLF VALERIO
マックス・ウルフ・ヴァレリオ:ブラックフット族(北米大陸の先住民族)の詩人、ライター。1984年にチャップブック(自費制作の冊子)「Animal Magnetism」(e.g. press)の発表とともに活動をはじめ、2006年に回顧録「The Testosterone Files」を、2018年に詩集「The Criminal: The Invisibility of Parallel Forces」を EOAGH Booksより出版した。ドキュメンタリー映画『Max』 (1992)や『Gendernauts: A Journey Through Shifting』(1999)にも登場している。

CHASE JOYNT
チェイス・ジョイント:映像アーティスト、脚本家、ライター。本作『アグネス〜』はLAの映画祭OutFestで観客賞を受賞し、現在、長編化がすすんでいる。2020年には、アシュリン・チンイー(Aisling Chin-Yee)と監督した新作『No Ordinary Man』をトロント国際映画祭でプレミア上映した。この作品は、死後にトランスジェンダーであったことがわかったジャズミュージシャンのビリー・ティプトンについてフィクションとドキュメンタリーで振り返る。2017年には、本「You Only Live Twice 」(マイク・フールブーム(Mike Hoolboom)と共著)を発表している。アーティスト活動のかたわら、ビクトリア大学(カナダ)でジェンダー スタディーズと視覚文化について教えている。
Instagram, Twitter, IMDb and chasejoynt.com

KRISTEN SCHILT
クリステン・シルト:シカゴ大学社会学科准教授、同大学ジェンダー&セクシュアリティ・スタディーセンターのディレクター。出版物は、「Just One of the Guys?: Transgender Men and the Persistence of Gender Inequality」 (2010年、シカゴ大学出版局)、「Other, Please Specify: Queer Methods in Sociology」 (共同編集、2018年、カリフォルニア大学出版局)や季刊誌がある。


 
 

キーワード解説/注釈

◾️GNC=Gender non-conforming ジェンダー ノン コンフォーミング
既存のジェンダー規範に異議を唱えたりする人やもの。規範に従わない人やもの。GNCはノンバイナリーととても似ていて、自らを説明するときに両方の言葉を使う人もいるが、GNCの人々は、より自身のジェンダーの認識を持っている人が多いとされる。GNCと自認するシスジェンダーの人もいる。ノンバイナリーという言葉を「シスジェンダーではない」という意味で使う人もいる。
生まれたときに割り当てられた性別を離れる人すべてがその対極にある性別に移行するわけではない。
参考:
Cosmopolitan https://www.cosmopolitan.com/jp/love/relationships/a34037354/what-is-gender-nonconforming/
Vice https://www.vice.com/en/article/wjwx8m/whats-the-difference-between-non-binary-genderqueer-and-gender-nonconforming
BBC Japan https://www.bbc.com/japanese/50754983

◾️ガーフィンケルの本
"アグネスはガーフィンケルの本に登場する" と字幕で表示される本のタイトルは「Studies in Ethnomethodology」(1967年)

◾️ACT UP アクトアップ
AIDS禍で人々が亡くなるなか、適切に対応しなかった政府や命より利益を優先した製薬会社や世間の偏見に対し、直接行動を起こした「力を解き放つためのエイズ連合」(AIDS Coalition to Unleash Power)。始まりは1987年3月のニューヨーク市だが、全米のみならず、国外にも同団体ができ活動はひろまった。彼らの初期のデモ、メディアキャンペーン、直接行動はHIV/AIDSの医療はもちろん、人種/格差/ジェンダーの問題と絡める考えをひろめた。
エイズ危機のはじめの10年は、悲嘆を公共での活動に転換し、公に葬儀を行ったり怒りと虚しさを動力に国立保健研究所(NIH)、疾病管理センター(CDC)、教会、米国政府に対してのプロテストを行った。
近年は、有志が集いPrep4All(団体)と協力し、ギリアド・サイエンシズにツルバダ(HIV感染を99%予防する薬)のパテント(独占権、特許)を放棄するように呼びかけ #HIVPreventionDay というキャンペーンをはじめた。
参考:
ノーマルスクリーン http://normalscreen.org/events/dwa2018 

◾️クリスティーン・ジョーゲンセン
1926年生まれ。ニューヨークの一流ナイトクラブのレビューで踊りや歌を披露していた俳優。アメリカの著名人の中で初めて性別適合手術を行なった人物として知られる。日本でも、毎日新聞で「週末は1週間前から予約をしないと席が確保できないほど」「ジョージという男子名で成人し、兵役にもついた。除隊後に手術を受けた。」と報じられた。1989年逝去。
参考:
写真:https://tinyurl.com/27ujwz6r (Getty Images)
毎日新聞 校閲センター (Twitter) https://twitter.com/mainichi_kotoba/status/689615898089394176

・劇中で「トラニー」という言葉が登場しますが、これは侮蔑語です。
・邦題は関西クィア映画祭 2019で上映された際につけられたものを使用しています。 原題は「Framing Agnes」
・Photo Courtesy of the Artists/ Corey Nichols/ Contour/ Getty

主催:ノーマルスクリーン
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

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Later Event: June 5
彼の髪の色