詩 RED REMINDS ME 赤色で思い出す

RED REMINDS ME
    Stacy Jennings-Senghor

赤色で思い出す、27年前の1995年10月17日
HIVという受け入れ難い診断を受け
人生を終わらせたいと思ったこと
自分が自分であることを憎んだこと
赤色で思い出す、本当にたくさんの痛み、人生の苦悩
切り裂かれた人生
赤色で思い出す、希望をすてること
赤は私を打ちのめし向き合う力を奪った
赤色が思い出させた、恥で顔を覆い、隠れること
私の名が傷つけられないために
赤色が思い出させた、背を向け立ち去ることを
今日もまた惨めさに浸り過ごすことを

でも今は赤色で思い出す、強くいないといけないと
うまくやっていくためにスティグマを倒す
今は赤色で思い出す、希望と信頼と信念を持ち
赤色で思い出す、すべてはなんとかなるということ
集中すべきことから目を離してはいけないこと
一日一日を平穏に過ごさなければならないということ
力の限り踏ん張らなければいけないこと
赤色で思い出す、スティグマが私の息子KJを奪ったとしても
赤色で思い出す、それでも踏ん張ること
赤色で思い出す、赤色が、思い出させてくれる... 自由であること


Stacy Jennings-Senghor
ステイシー・ジェニングス
サウスカロライナ州コロンビア拠点の詩人、スピーカー、コミュニティワーカー、アクティヴィスト。彼女はDat With(out) Artのビデオ、2018年の「Positive Women's Network」や2022年の「Here We Are: Voices of Black Women Who Live with HIV」にも出演している。どちらもノーマルスクリーンのウェブサイトで公開中。

・画面右下【CC】をクリックして日本語などの字幕を表示できます。

日本初上映イベントと作品の詳細はこちら:https://normalscreen.org/events/dwa24

本プログラム審査員の一人、アリー・A・ムハマッドさんによるイントロダクション文章はこちら:https://normalscreen.org/blog/dwa24intro

ジェニングスさんがこの詩の一部を朗読している「Here We Are: Voices of Black Women Who Live with HIV」:https://normalscreen.org/events/dwa2022 (ビデオ3作目|監督:ダヴィナ “Dee” コナー)

【赤色で思い出す…】イントロダクション Day With(out) Art 2024

今年はこの資料のイントロダクションに、詩人でコミュニティワーカーであり、過去にDay With(out) Artのビデオプログラムに参加したことのあるアーティスト、アリー・A・ムハマッドさんをお招きしました。今年のプログラム「Red Reminds Me…(赤色で思い出す...)」の審査員の一人でもあるムハマッドさんは、このプログラムに収録された7本のビデオや自身のHIVにまつわる経験から生まれる感情の幅について考察をしています。資料には、Stacy Jennings-Senghorさんの詩も掲載されています。この詩は今年のプログラムのインスピレーションとなったオリジナル作品です。

Day With(out) Artは、HIV陽性者としての日々の生活を支える題材を探求するための挑戦的な場です。このプログラムは、AIDSやHIVを持たずに生きている人々の感覚に衝撃を与えることもあれば、ごくありふれた生活や人生を、私たちが生きる世界で、営んでいることを宣言する場ともなります。同時に赤が思い出させてくれるのです:自分のからだのことを自分で決めるための戦いや、ウィルスを持ち病人とされる人との親密な関係のための戦いが今も世界中で続いていることを。

HIVは私たちの体や心に多くの影響を及ぼすのだから、その意味を体現する方法がひとつに限られるわけではありません。曖昧さを感じることも記憶するというこの儀式にも幅があり様々です。ウイルスと共に生きながらも、自分自身を受け入れ、エロティックな感覚を育む方法がそこにあります。今年のビデオ作品は、それを最もよく表しています。ユーモアがあるものから内省的なものや活気あるものまで様々です。私たちはそれぞれ異なる方法で物語を語ります。なぜなら、私たちは同じではないからです。また、地理的な場所やアイデンティティが、個々の苦闘と文化的な表現や芸術の特異性を支えています。
ポジティブの生き方はひとつではありません。「赤」を記憶する方法もひとつではありません。

私は赤をみると、“自分が印付けされた”と感じた瞬間、つまり、HIV陽性と診断されたときに何かが永遠に私に刻み込まれたように感じたのを思い出します。その感覚は、私が幼少の頃にHIV陽性で若くして亡くなった人々の記憶によってさらに強まり、さらに赤は、1990年代初期から後期にかけてAIDS支援団体で働いていた母を思い出させます。彼女のケアワークを通じて私は赤を“最も必要なときにお互いをケアし合うという決意の象徴”として捉えています。

赤はまた、HIVと血縁や共同体のつながりの深さを強調しています。それが家族でもコミュニティでも、HIV陽性であるとき私たちは皆、共に集まっているのです。そして公表/告白の瞬間を嫌でも思い出させます。なぜなら、それは私が最も無防備だと感じる瞬間だからです。赤は私の脆さを思い出させるのです。

HIVと共に年齢を重ねる者として、赤により障害のことも考えさせられます。HIVと16年間生きてきたことで、私のからだは変化しました。からだの動きや、人との向き合い方も変わり、結局、世間を渡り歩く新しい方法を一から学ぶ必要がありました。

赤はまた、刑罰国家( the carceral state)を思い起こさせ、私はグレゴリー・スミスについて知った時のことを思い出します。スミスは1990年から収監されていました。彼は、隠し持っていた武器による殺人未遂罪で有罪判決を受けたのです。その「隠し持っていた武器」とは、彼のHIVステータスのことでした。彼はHIV陽性のブラックのゲイ男性で、ニュージャージー州南部の出身でした。13年の刑を宣告され、スミスは2003年11月10日にAIDSの合併症で亡くなりました。40歳でした。この出来事は、HIV陽性であるという理由で、国家がいかに多くの人々から自主性/自己決定権を奪ってきたかを思い出させます。グレゴリーのケースについて知ったことで私は、HIVを犯罪として扱うことに反対する発言や活動のさらなる必要性を感じました。

赤はあらゆる考えを呼び起こします。今年、委託制作された7作品を観る中で、赤がHIV陽性のアーティストたちに、AIDSパンデミックを生き抜く中で培われた深い知恵をどのように思い出させるのかを皆さんは目の当たりにすることでしょう。もしあなたがHIVと生きている方であれば、あなたのユニークな経験が反映されたり、肯定されたりするスペースを見つけられることを願っています。そして、HIV陽性でない方に対しては、日々の生活の中でHIVと生きる人々を支え、愛するために何ができるのかを、より深く考え、行動に移せるようになることを願っています。

 —  アリー・A・ムハマッド(aAliy A. Muhammad)


日本初上映イベントと作品の詳細はこちら:https://normalscreen.org/events/dwa24


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