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赤いアニンシー; あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く


赤いアニンシー;あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く|監督:ラッチャプーン・ブンバンチャーチョーク|30分|2020年|タイ|RED ANINSRI; OR, TIPTOEING ON THE STILL TREMBLING BERLIN WALL อนินทรีย์แดง | ANINSRI DAENG | Directed by Ratchapoom Boonbunchachoke | Thailand | 2020 | 30 min

現代のバンコクに住む、かわいくてフェミニンな声をもつアン。カトゥーイでセックスワーカーの彼女が潜入スパイとして遂行する特別ミッションを課せられた。しかし、そのミッションはアンがシス男性を装い学生のアクティヴィストと“いい関係”になることから始まる。そのお相手であるジットは、悪人の声声で話す堅い青年だった。

配信期間:2022年1月17日〜1月31日

チケット: 無料

・Peatixに無料登録のうえチケットを購入しPeatixサイト内で鑑賞してください。
・ノーマルスクリーンの活動継続を応援してくださる場合は、ぜひ応援チケットを購入してください♡
・本編は日本語字幕付き。
・声に関する表現が複雑な作品のため、音が聞こえない人向けに劇中の音声に関する補足を作りました:補足を読む(ネタバレを含みます)
・We present the film only with Japanese subtitles. The spoken language is Thai.

コロナウィルスが蔓延する以前、そして若い世代を中心にした大規模な2020年の反政府デモの直前にバンコクで撮影された『赤いアニンシー; 〜』は、「往年のタイ映画に発想を得た物語」。現在30代の監督ラッチャプーン・ブンバンチャーチョークは、タイは経験していないとされる植民地化の問題に強い関心をもち、本作も冷戦時代のアメリカとの関係を意識している。「アニンシー」(インシー)とは鷹を意味し、『インシー・デーン』(レッドイーグル)というタイでフランチャイズ化された有名なヒーロー映画からきている。『赤いアニンシー; 〜』のぎこちない吹き替え/アフレコは、「往年のタイ映画」でみられた手法の1つだろう。この政治的な、そして​​カトゥーイが主人公の物語において、声がどこから出ているのか/聞こえているのか、そして “自分の声”や“他者の声”やその“ずれ”または“遅れ”は、非常に重大な意味をもつ。しかしラッチャプーン・ブンバンチャーチョークは絶妙なユーモアの加減で巧みに利用している。

Ratchapoom Boonbunchachoke
ラッチャプーン・ブンバンチャーチョーク:潮州と海南にルーツをもつタイ人、バンコク拠点の映画作家。チュラロンコン大学で映画を専攻し卒業。現在は商業映画やドラマシリーズの脚本家として働き、映画や批評の講師としても活躍する。これまでにベルリン国際映画祭のベルリナーレ・タレンツに参加。今回配信の映画は、ロカルノ映画祭2020で上映され、若手部門の最優秀国際短編映画賞を受賞した。次回作は『A Useful Ghost』というタイの神話をベースにした長編で、既にタイで助成を受け、タレンツ・トーキョー・アワード2021でもスぺシャルメンションとして企画が受賞している。

・本作は、イメージフォーラム・フェスティバル2021の特集[フィルム・イン・シェルター]「タイ “無知の幸福:バンコク街頭の遠い展望に寄せる歌 1.無知”」(プログラマーはウィワット・ラートウィワットオン)で日本初上映され、後に京都と名古屋、そして札幌国際短編映画祭で『レッド・インスリ〜レディーボーイのスパイ〜』の日本語題で上映/配信されました。 

・字幕で「レディーボーイ」と表記される箇所は、タイ語では「カトゥーイ」と言っています。カトゥーイは、トランスジェンダー女性やレディーボーイと翻訳されることが多いですが、流動的なニュアンスもありトランスフェミニンやフェミニンなゲイ男性が含まれることもあるようです。日本語ではオカマと呼ぶ人や翻訳する人も多いようで、オンラインで検索すると、侮蔑語が多く出てきます。遡ると、インターセックスの意味もあったそうです。(参考:「第一章 性の多様性を表す語彙――少数派の名づけと名乗り[今村真央]」|東南アジアと「LGBT」の政治|明石書店)

・字幕で「下派」と表記される箇所は、「受け」または「ボトム」の意味です。

・ライター済藤鉄腸さんによる監督インタビューもぜひ読んでみてください→「タイ、響き渡る本当の声~Interview with Ratchapoom Boonbunchachoke」(ブログ 鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!|2020年)https://razzmatazzrazzledazzle.hatenablog.com/entry/2020/08/24/005144


主催:ノーマルスクリーン
協力:国際交流基金アジアセンター|イメージフォーラム・フェスティバル
写真:ラッチャプーン・ブンバンチャーチョーク

・2022年1月17日、本ページ公開。